日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『パパと親父のウチ呑み』
『パパと親父のウチ呑み』 第1巻
豊田悠 新潮社 ¥580+税
(2017年4月8日発売)
突然、元カノから子どもをあずけられた、整体師の千石。
妻と離婚して子どもを引き取った、マンガ編集者の晴海。
子育てのため郊外の一軒家でルームシェアをすることになった2人のシングルファーザーの奮闘を描いた話題作『パパと親父のウチご飯』のスピンオフ企画。
御本家の主役となるのが“男の家庭料理”なら、こちらは“男の家呑みのアテ”。
子どもが小さいうちは、呑んでストレスを発散したくても、なかなか呑みにいけないのが主婦(夫)の悲しさなわけで。
本作の2人のように、早朝から子どもを叩き起こして、着替えてごはんを食べさせて、やっと送り出して仕事に行ったら行ったで、やっぱりいろいろあって、でも同僚と呑みにいくこともできず、急いで帰ってごはんつくって食べさせて、お風呂に入れてやっと寝たと思ったら、こっちももうクタクタで……。
でもでも、だからこそ、そんな自分にお疲れさんの意味をこめて「呑みたい!」と思う人には、「ソト呑みできないなら、ウチ呑みすればいいじゃないか。」というオビコピーが輝いて見える!?
性格も趣味も正反対だが、食に関しては変に気が合うがゆえに、共同生活もなんだかうまくいってる2人が、帰って寝る前のひととき、ささやかな酒と缶ビールで祝杯をあげれば、ごはんとお茶ではできないような話もポロっと飛び出して……。
こんなウチ呑みって、こんな関係っていいな~と、独身貴族も妻帯者も、思わずうらやましくなるはず。
登場するメニューも、フライパンで蒸し焼きにした枝豆、マグロとアボガドを切ってユッケ風に和えたもの、ビニール袋でつくる中華風たたききゅうり、片手鍋でチーズと白ワインを溶かしただけのチーズフォンデュ……など、パッとつくれて酒に合う、間違いない料理ばかり。
レシピもついて、ズボラな独身男女にもうれしい1冊だ。
<文・井口啓子>
ライター。月刊「ミーツリージョナル」(京阪神エルマガジン社)にて「おんな漫遊記」連載中。「音楽マンガガイドブック」(DU BOOKS)寄稿、リトルマガジン「上村一夫 愛の世界」編集発行。
Twitter:@superpop69