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『オンナミチ』第5巻 北沢バンビ 【日刊マンガガイド】

2014/09/16


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『オンナミチ』第5巻
北沢バンビ 小学館 \552+税
(2014年8月29日発売)


根っからの音楽好きが高じてレコード会社に就職、制作担当としてバリバリ働く山口梨花(32歳)。男運はいまいちだけど仕事は楽しいし、将来の心配なんてまだしなくても大丈夫……梨花みたいな考え方のシングル女性はいまどき多いはず。
そんなアラサー女子の仕事や恋愛の厳しい現実をコミカルに描いた『オンナミチ』が完結を迎えた。

32歳の梨花が、俄然自分の生き方を直視するようになったのは、突然目の前に現れた“52歳の自分”。
小太りでちんちくりん、きついパーマのどこから見ても冴えないオバチャンは、梨花に警告するために未来からやってきたのである。「自分のスナックでビール瓶につまづき52歳で孤独死」というしょうもない運命を変えるために、20年前の自分を叱咤激励しにきたというわけだ。

けっこうトンデモな設定なのだが、このオバチャンが実にいいキャラで親身な世話焼きっぷりが随所で泣かせる。自分のことだから当たり前かもしれないが、自分のことをすみずみまで理解しているこのオバチャンみたいな人がそばにいてあれこれ助言してくれたらどんなにいいだろう、と思ってしまう。
おっと、それをひとりでちゃんとやれってハナシなのだが……。

仕事の失敗でこれまでになく自信を喪失し「あたしは何の取り柄もないダメ女だったんだ」と嘆く梨花に、「そうやって、『自分はダメだから』の一言でかたづけるのは、楽だし、簡単だからやろ」とカツを入れられる場面にシビれる。
これ以外にも、「お前はいったい今までなんのためにやってきたんや!? 誰かに勝つためか? 人に褒められたいからか!?」等々、名言が炸裂。

うまくいく人生の方程式なんてものはない。本気で自分に向き合い始めた梨花の恋愛、仕事、そして様々な人間関係へのスタンスがくっきりと浮かび上がり始める最終巻。
手放すのに勇気がいったものもあるけれど、そのぶん憑きものが落ちたように晴れやかなヒロインの表情が印象的だ。



<文・粟生こずえ>
雑食系編集者&ライター。高円寺「円盤」にて読書推進トークイベント「四度の飯と本が好き」不定期開催中。
ド少女文庫

単行本情報

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