365日、毎日が何かの「記念日」。そんな「きょう」に関係するマンガを紹介するのが「きょうのマンガ」です。
6月4日は、ある少女の決意の一日。本日読むべきマンガは……。
『6月4日月曜日』
里中満智子 講談社 (¥350+税)
毎年6月4日が近づくと必ず本作を思い出し、居ずまいをただすような気持ちになる。
1973年に「なかよし」の別冊付録として発表されたのだが、大人になってからも何度も読みかえし、そのたびに鮮烈な感動を覚えている。
早朝にふと目を覚ました美幸は両親の会話を立ち聞きし、自分が白血病で余命1年と知ってしまう。
それは6月4日月曜日のことだった。
小学6年生といえば、将来の夢をいろいろと思い描く年頃だ。突然に未来を断たれ、死の恐怖を突きつけられるヒロインの気持ちはいかばかりか。
健康な級友の顔を見ることさえつらく、美幸は学校を飛び出してしまう……。
しかし、美幸は公園で風船売りをしている老人と話したことがきっかけで、今生きていることのありがたさに気づくのだ。
この世にあるものはすべて、いずれなくなる。与えられた生に感謝し、この一瞬をどのように生きたらいいのか。自分を育ててくれた両親に、出会った人たちに何を残せるのか。
低年齢向けの作品ながら、哲学的ともいえる人生訓が優しく綴られていて心にしみる言葉の宝庫。
さすがは巨匠・里中満智子と唸らされる。
絶望的な気持ちで始まった6月4日の朝から、小さな胸に覚悟を秘め、笑顔を浮かべて星空を見あげる夜までの1日を描く。
「いまにわかるよ 一日一日をたいせつに生きていれば さみしさよりもよろこびのほうがこの世にはたくさんあるってことがね」という老人の言葉が深く心に残るのだ。
<文・粟生こずえ>
雑食系編集者&ライター。高円寺「円盤」にて読書推進トークイベント「四度の飯と本が好き」不定期開催中。
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