日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『インド夫婦茶碗』
『インド夫婦茶碗』 第23巻
流水りんこ ぶんか社 ¥745+税
(2017年5月8日発売)
1年の4分の3を日本で働いて、4分の1をインドでグータラ過ごすという生活を続けていた漫画家のリンコさん。
そんな彼女の運命を、1本の国際電話が変えてしまった!?
深夜、仕事をしていたリンコさんのもとに電話を掛けてきたのは、インドでよく泊まっていた安宿のレストランのマネージャー・サッシー。
彼が口にしたのは、「ケッコンしてくれなきゃ ワタシ ガンガー(ガンジス川)に飛びこむの」という熱烈なプロポーズで……。
連夜続くコールに根負けして、結婚を決めたリンコさん。
しかしふたを開けてみたら、サッシーがプロポーズした理由は、まわりからそろそろ身を固めろといわれて、日本人が好きだから一番古い日本人の友人であるリンコさんに結婚を申しこんだというもの!
そこから約20年。
インド人夫との結婚をめぐる顛末と2人の子どもの出産・子育てを描いてきた『インド夫婦茶碗』も、まさに“夫婦茶碗”という言葉がぴったりな風合いに。
長男のアシタくんは大学生となって家を出て、長女のアルナちゃんも高校生に。
そしてリンコさんとサッシーは、すっかり熟年夫婦?
年齢も重ねてお互いに無理はできなくなり、それぞれを労わりあう……どころか、どちらのほうが身体が弱っているかでひと揉め!!
そう、熟年夫婦ではあっても枯れるどころか、にぎやかで波乱含みなのはあいかわらず。
ともかくいいあいのさまに笑わされてしまう。
もともと本作のおもしろさは、国際結婚ものというところに留まらず、グータラを自称しながらもバイタリティにあふれていて、好奇心と洞察力に満ちたリンコさんのキャラクターあってのもの。
インド暮らしを描いた『インドな日々』がおもしろかったのも、同国のあれやこれやのおもしろさだけじゃなく、著者の目線とそこに飛びこんでいく著者のアクティブさがあったからこそ。
何気ない日常話のなかで、老いや死というものにも触れられている最新刊。
いってしまえば世間話レベルながら、そこに悠久の何かや宗教的な匂いまで感じられてしみじみしてしまうのは、やはりインドの成せるワザなのか、著者の個性あってなのか。インド夫婦もインドと同じくらい深くて濃くて、おもしろい!
<文・渡辺水央>
マンガ・映画・アニメライター。映画『暗殺教室』パンフも手掛けています。