日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『qtμt キューティーミューティー』
『qtμt キューティーミューティー』 第2巻
さやわか(著) ふみふみこ(画) スクウェア・エニックス ¥571+税
(2017年5月25日発売)
第1巻の推薦文が岡田麿里に虚淵玄。第2巻は園子温。
まるで“このマンガはやばい!”という警告文のようだ。
作中では女の子がかなりひどい目にあう。
ふみふみこ作品のなかでもとりわけ絵柄が丸っこくてかわいいだけに、残虐度がより際立つ。
中学2年生の桃園はな(ももぞの・はな)は、いたって普通の女の子。
はなの靴箱に「絶対ニ話スナ」とかかれた手紙が入っていた。
不審に感じた友人の鈴森四葉(すずもり・よつば)は、生徒会に相談。
書記長の掛神穂紀香(かけがみ・ほのか)、地下アイドル活動中の成留小栗(なるる・こくり)が話を聞いて、問題解決に挑もうとする。
少女たちが性的なトラウマのスパイラルに落ちていく、心理SFアクション。
第1巻では四葉が、第2巻では小栗が、性的虐待を受けている描写が続く。
彼女らが出会った百万山那涙(めがやま・なでぃあ)は、相手の心のなかに痴漢の恐怖を送りこみ、不快感と羞恥で狂死させる力を持っている。
那涙はかつて通学電車内でひどい目に遭わされたことがあり、その時のフラッシュバックを何万倍にも増幅させて相手に送りこんでいるらしい。
那涙のような能力者・突然変異者(ミューティー)が、研究対象として人工的につくられている。
心身のストレス経験があった場合、そこから遺伝子に影響を与えて能力を発現させられるという。
過度のストレスを経験ずみな面々には、ミューティーへの適合はバッチリだ。
第2巻では小栗がミューティーになるべく、研究所に向かった。
小栗「こないだミューティーになれば 自分の苦しみを人のために役立てられるっていったでしょ」
研究所主任・百万山「新しい力を得れば その力をえるために受けた痛みも辛苦も含めて すべてが乗り越えられる」
自分のトラウマを、正義の力に変えられる、と信じていた。
闇の郵便配達組織「トリステロ」とはなんなのか。
研究所はミューティーをなぜつくっているのか。
SF的な設定が物語にどんどん絡み始める第2巻。
ミューティーとトラウマの関係が深く描かれるにつれて、少女たちが抱えた性的な闇が次々あらわになる。
思春期少女の性的搾取が題材のこの作品、逃げ場のなさに読んでいてつらくなる。
と同時に、少女が生贄のようになっていく姿の儚さには奇妙な美がある。
どうにも気持ちがざわつく作品だ。
<文・たまごまご>
ライター。女の子が殴りあったり愛しあったり殺しあったりくつろいだりするマンガを集め続けています。
「たまごまごごはん」