日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『qtμt キューティーミューティー』
『qtμt キューティーミューティー』第1巻
さやわか(作) ふみふみこ(画) スクウェア・エニックス ¥581++税
(2017年3月25日発売)
さやわか原作による、ふみふみこの最新作。
朝、食パンをくわえながらの「ちこくちこくー」、手づくりクッキーのプレゼント、下駄箱に手紙……。そんな学園コメディのテンプレ連打のオープニングに油断していたら、見事に足もとをすくわれる。
夢見がちな愛されキャラのはな、はなの親友でかっこよくて女子にモテモテの四葉(よつば)、ライブアイドルとして活動中の小栗(こくり)、生徒会書記長をしている優等生で世話好きの穂紀香(ほのか)。
ある日、はなのもとに差出人不明の手紙が届いたことから、少女たちの「日常」は大きく豹変してゆく――。
平穏で楽しいユートピアのように見えた少女たちの日常が、じつは深い闇や秘密をはらんでいて、回避不可能な大きな「力」により、次第にディストピアの様相を呈していく展開は、ふみふみこの前作『さくらの園』を想起させる感じ。
少女たちの目覚め始めたばかりの「性」の甘い痛みをゆるふわタッチで刹那に描いてみせる手つきは、さすが! とうならされるが、今作は原作をネット、ゲーム、アイドルを始めとするテン年代サブカルチャーの論客・さやわか氏が手がけているだけに、秘密を漏らす者を速やかに葬り去るという闇の郵便配達組織「トリステロ」と彼らと闘う謎の少女・那涙など、いかにもSFファンタジーな設定が組みこまれ、よりキャッチーな物語性を感じさせる。
はなが知った「秘密」とははたしてなんなのか? トリステロと那涙の因縁とは?
まだまだ謎だらけの作品なうえに、本巻ラストではまさかの驚愕展開もあり――。
早くも次巻が気になってしょうがない!
<文・井口啓子>
ライター。月刊「ミーツリージョナル」(京阪神エルマガジン社)にて「おんな漫遊記」連載中。「音楽マンガガイドブック」(DU BOOKS)寄稿、リトルマガジン「上村一夫 愛の世界」編集発行。
Twitter:@superpop69