365日、毎日が何かの「記念日」。そんな「きょう」に関係するマンガを紹介するのが「きょうのマンガ」です。
6月22日は『こち亀』の第1話がジャンプに掲載された日。本日読むべきマンガは……。
『こちら葛飾区亀有公園前派出所』 第1巻
秋本治 集英社 ¥390+税
ファンの人にとっては常識かもしれないが、『こち亀』こと『こちら葛飾区亀有公園前派出所』の第1巻に収録されている第1話「始末書の両さんの巻」は、じつは連載第1回目のものではない。
『こち亀』の連載がスタートしたのは1976年9月21日からであり、その際に第1話として掲載されたのは、単行本では2つめのエピソードになっている「下町の青年警察官の巻」である。
じゃあ単行本の第1話はいったい何?といえば、そちらは1976年4月期の月例賞の入選作品として、同年の「週刊少年ジャンプ」29号に読み切り掲載されたもの。
本日6月22日は、その読み切り版が掲載され、世に初めて『こち亀』が出た記念すべき日なのである。
ということで、本日ピックアップするのはもちろん『こち亀』の第1巻。
もともと読み切りであるがゆえ、第1話として収録されているエピソードは31ページもあるボリューミーなものとなっている。そして何よりも注目したいのが、全体的に過剰で過激なネタの大盛りっぷり。
当時はどちらかといえば劇画に近いタッチであり、見た目からしてやたら濃いこともさることながら、内容もおおよそ現在では許されないレベルの過激なギャグが多分に含まれている(実際、現在発行されている単行本では、一部はマイルドなセリフに差し替えられてしまっている箇所もある)ことに驚く人も少なくないだろう。
また、当時は秋本治がアシスタントを使わずにひとりで描いていたこともあり、小ものや背景の描きこみが異常なまでに細かいことも要注目だ。
それにしても、両さんの血の気の多さはいうまでもないことだが、読み切り版からしっかり登場している中川の非常識さも今読むと大概なもの。
派出所勤務の初日から遅刻(この時はスーパーカーではなくタクシーで出勤)したことに始まり、勝手に特注品の制服と拳銃を愛用していることを悪びれもせずに語った挙句、『ダーティハリー』の真似をして一般市民に発砲!
これはもう、現実なら始末書どころでは絶対にすまされないこと間違いなしだが、両さんと中川は「ボケとツッコミ」の関係ではなく「Wボケ」であったのも、当時としては斬新だったのではないだろうか。
ほかにもおなじみの大原部長ではなく、どことなくヒトラーに風貌の似た上司が登場するなど、読み切り版ならではのポイントは数多い。
そこに注目しながら読んでみると、よりいっそう『こち亀』の味わいも増すこと間違いなしである。
「時代だなぁ」ではけっして片付けられない、どうかしてるとしか思えないパワーをあらためて感じてほしい。
<文・大黒秀一>
主に「東映ヒーローMAX」などで特撮・エンタメ周辺記事を執筆中。過剰で過激な作風を好み、「大人の鑑賞に耐えうる」という言葉と観点を何よりも憎む。