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『天空侵犯』第2巻 三浦追儺(作) 大羽隆廣(画) 【日刊マンガガイド】

2014/09/23


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『天空侵犯』第2巻
三浦追儺(作) 大羽隆廣(画) 講談社 \560+税
(2014年9月9日発売)


高層ビルしかない街。下には絶対降りられない。
追いかけてくるのは、武器を持った仮面の殺人鬼たち。
殺されるか、さもなくば殺すか。
高所恐怖症じゃなくても高いところが怖くなる、極限状態を描いたサスペンスだ。

主人公の本城ゆりは気がつくと、眼下に人のいない超高層ビルの最上階にいた。目の前では、理不尽に人が殺されている。
彼女は必死に逃げ場を探し始める。とはいえどこに逃げればいいというのか。
この世界にいるのは、まだ意識を持っている人間と、仮面殺人鬼の2種類。
彼女の目の前で残された人間たちは、逃げ場のない高層空間と、迫り来る仮面の恐怖に絶望し、飛び降り自殺していく。

画面は高層ビルの上ばかりなので、広く開けた絵が多い。
その解放感が読んでいてゾクっとする。いつでも飛び降りれば、恐怖から解放されるということだから。

そもそもここはどこなのか、どういうルールで殺人ゲームが行われているのか。状況説明は作中でいっさいなされない。
ほのめかされているのは、ゆりの兄もこの世界にいること、ヘリコプターが唯一の脱出手段らしいということ、そして仮面殺人鬼は元は人間だ、ということのみ。
謎解きというにはあまりにもヒントがない。
この意味不明な空間で、ゆりがわからないまま、生き延びる手段をあれこれ手探りで模索していくのが面白い。

『天空侵犯』というタイトルは、一見高層ビル群を表しているように見える。
しかし本当の意味が2巻で明かされているので、是非確認してほしい。
謎が深ければ深いほど、生きようとする人間の意思はよりいっそう強靭に映るのだ。



<文・たまごまご>
ライター。女の子が殴りあったり愛しあったり殺しあったりくつろいだりするマンガを集め続けています。
「たまごまごごはん」

単行本情報

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