日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『図書館の主』
『図書館の主』 第15巻
篠原ウミハル 芳文社 ¥590+税
(2017年6月16日発売)
図書館司書の御子柴は愛想がないどころかニコリともしないが、図書館のソムリエの腕は随一。
子どもたちばかりでなく大人の常連客にも慕われている。
しかし、この最終巻では大事件が勃発。タチアオイ児童図書館が閉館の危機に見舞われる!
「タチアオイ」は公立ではなく私設の図書館だ。
オーナーである小手川女史の訃報に続いてもたらされたのは、オーナーが所有する企業はこの図書館の経営から手を引くことになったという決定事項だ。
多くの人に愛される場所をなくしたくない!
スタッフ、地域の利用者たちの気持ちはひとつだが、小さいとはいえ図書館をひとつ買いとり、維持していくなんて簡単にできることではない。
そんななか、意外な人物が御子柴を訪ね、図書館を残すためのある条件を突きつけるのだ。
状況が大きくうねる本巻でキーワードとなる本は、『だれも知らない小さな国』(佐藤さとる)。
「コロボックル・シリーズ」の第1巻として知られる、わが国を代表するファンタジー文学だ。
御子柴にこの本をすすめられた人物がそう感じたように……大人になって初めて読んだとしても、おもしろいうえに感情移入できる物語なのだ。
「世界がこんなふうであったら」と思う理想のために何ができるのか、考えさせられてしまう。
本が伝えるメッセージを、図書館を舞台とした人間ドラマと絡ませる手腕の見事さが光る。
「こんな図書館があったらいいな!」という気持ちを、さあ何につなげようか。
<文・粟生こずえ>
雑食系編集者&ライター。高円寺「円盤」にて読書推進トークイベント「四度の飯と本が好き」不定期開催中。
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