日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『パラフィリア~人間椅子奇譚~』
『パラフィリア~人間椅子奇譚~』 第2巻
佐藤まさき 小学館 ¥630+税
(2017年6月12日発売)
醜い容貌を持って生まれた椅子職人の男は、いつしか椅子のなかに潜み、椅子と一体になり、女性に座られる感触を味わいたいという欲望に囚われていく……そんな江戸川乱歩の変態的フェティッシュが全開になった名作短篇「人間椅子」。
本作『パラフィリア~人間椅子奇譚~』は、そんな“奥様”と椅子職人の関係を、完璧生徒会長と下級生の女の子に置き換えたいわば百合版・人間椅子。
それだけでも最高だが、その生徒会長が不倫相手の教師を誤って殺害してしまったせいで、人間椅子少女は、生徒会長の犯罪を隠蔽するよう影の共犯者として振る舞い始める。
秘密を知る脅迫者の存在を突き止めるべく学校の屋根裏を(なぜか全裸で)徘徊するさまは「屋根裏の散歩者」も入っている感じだし、乱歩の怪奇性、猟奇性、エロスとフェティッシュが見事に受け継がれていて大満足である。
第2巻で完結というのがいささか残念だが、乱歩ファンはぜひとも読みのがしなきよう。
<文・前島賢>
82年生、SF、ライトノベルを中心に活動するライター。朝日新聞にて書評欄「エンタメ for around 20」を担当中。
Twitter:@maezimas