365日、毎日が何かの「記念日」。そんな「きょう」に関係するマンガを紹介するのが「きょうのマンガ」です。

7月17日はディズニーランドがアメリカで開園した日。本日読むべきマンガは……。

『まるごとディズニーブックス アナと雪の女王 ステキな毎日』
ディズニー・パブリッシング・ワールドワイド KADOKAWA ￥800+税

20世紀アメリカ。
始めに、ひとりの男の頭のなかに、ある“夢の世界”があった。
それはときにマンガとして紙の上に描き出され、またときにはアニメとしてテレビや銀幕に映し出され、彼と彼の会社が生み出す愉快なキャラクターたちは、いつも人々を魅了してやまなかった。

1955年、夢はやがて現実にまであふれ出す。
カリフォルニア州アナハイムに確保された73万平方メートルの土地へ投影された男の夢は、彼の名前を冠した巨大な遊園地となり、アメリカじゅう、そして多くの国々の大衆を呑みこむエンターテインメントとリゾートの王国に発展していく。
60年以上がたった現在までずっと世界随一の利用者数を誇るテーマパークの幕開けである。

男の名はウォルト・ディズニーという。
そして本日、7月17日こそは、かのディズニーランドがアメリカで正式オープンした記念日なのだ。

さて、ディズニー作品といえば時代ごとに名作・代表作と讃えられるタイトルがある。
近年だと、興行面も含めて特に目覚ましかったのが『アナと雪の女王』だろう。
とある王国の王女姉妹を主人公として、氷を操る異能力が他人を傷つけるせいで心を閉ざして逃亡した姉エルサと、姉を救おうとする天真爛漫な妹アナの絆を描いた一大ファンタジーアニメで、ミュージカル仕立てのなかエルサが唄う「Let it go」が日本でももてはやされ……という説明も今さらな、特大ヒット作となった。

ディズニーアニメはしばしば続編や外伝を連発することでもおなじみで（『ピーター・パン』の妖精が主人公の『ティンカー・ベル』シリーズなんて続編OVAが6本！）、『アナと雪の女王』も「エルサのサプライズ」やオラフ主人公の番外編といった短編がつくられている。

さらに、熱心なスピンオフ手法はアニメだけでなくコミック方面にまで広がり、『アナ雪』の場合は『アナと雪の女王 ステキな毎日』というマンガを読むことができる。
これはもともと米国で『アナ雪』だけを専門に特集する月刊誌「Disney Frozen Magazine」というものがあり、そこに掲載されたマンガを中心にまとめた本だ。
日本でディズニーアニメのコミカライズを刊行する「まるごとディズニーブックス」というシリーズがここ数年続いているのだが、これもその一環である。

内容は、1話あたり1ページから10ページまでのショートコミックを合計40編収録。
氷のお城で国の人々とスケート大会を楽しむ話、夏の夜に火を囲んでキャンプする話、姉妹がプレゼントを贈りあってお互いの愛情と幸せをかみしめる話……などなど、おとぎ話のしめくくりにある「そのあとみんな楽しくしあわせにくらしましたとさ」を具体的に描き出したアフターストーリーとなっている。
日本のアニメに照らせばいわゆる「日常もの」ジャンルの感覚でほのぼのと楽しめるだろう。

王国を取りしきって多忙ながらも充実した生活をおくるエルサ。
彼女をそばで支えつつ、遊びや催しごとにいそしむアナ。
2人がひたすらキャッキャウフフの姉妹百合を繰り広げるさまは、「見たかったもの見せましょう！」といわんばかりのサービス精神が光っている。
二次創作の畑でよくいう「公式が最大手」感でいっぱいだ。

ディズニーの続編量産体制は、ときに蛇足や野暮と批判されることもあるけれど、これはうれしいやつですねえ。

＜文・宮本直毅＞
ライター。アニメやマンガ、あと成人向けゲームについて寄稿する機会が多いです。著書にアダルトゲーム35年の歴史をまとめた『エロゲー文化研究概論 増補改訂版』（総合科学出版）。『プリキュア』はSS、フレッシュ、ドキドキを愛好。
Twitter:@miyamo_7