日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『真昼のポルボロン』
『真昼のポルボロン』 第1巻
糸井のぞ 講談社 ¥429+税
(2017年6月13日発売)
9歳の少女が、父と初めて出会い2カ月間の同居生活を送ることに。
……といっても、やすやすとはハートフルな展開にならないのが本作の魅力だ!
ヒロイン・るつぼは、生後間もない自分と母を捨てた父を「絶対に許さない」と心に決めて生きてきたのだから。
母はるつぼが生まれて間もなく他界、おばさんに育てられたるつぼは、基本的には聞きわけのよい女の子だ。
ただし、徹底して大人を信用していない様子はひねくれ者というよりは、まったく理にかなった態度かも。
るつぼを呼び寄せた父を前に、頑としてひと言もしゃべらずにとおすのは、あっぱれというしかない!?
なぜか父の家に転がりこんでいるチャラそうな青年にも、隣の喫茶店のお姉さんにもいっさい口をきかず……しかし、いわゆるふてぶてしく淡々と大人たちを観察しているヒロインに興味津々だ。
大人びているようでちゃんと9歳という年齢らしいスキも見せる、るつぼの描写が秀逸である。
一方で小説家の父はまるで過去のことなど何もなかったかのように、るつぼに接するが……突然にるつぼを招いた真意はどこにあるのか。
ひと筋縄ではいきそうもない家族再生物語、ここに開幕!
<文・粟生こずえ>
雑食系編集者&ライター。高円寺「円盤」にて読書推進トークイベント「四度の飯と本が好き」不定期開催中。
ブログ「ド少女文庫」