日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『手塚治虫エッセイ集成 映画・アニメ観てある記』
『立東舎文庫 手塚治虫エッセイ集成 映画・アニメ観てある記』
手塚治虫 リットーミュージック ¥900+税
(2017年6月20日発売)
手塚治虫の生涯がたった60年だったと思うと、あらためて信じられない気持ちになる。
質はもちろんのこと、その仕事量も“伝説”。
そんななか、年間300本以上の映画を観ていたとはどういうことなのか!?
本作は、雑誌や新聞、プログラムなどに発表された手塚の映画・アニメ評を厳選して編集されたエッセイ集である。
ディズニーやチャップリン、西部劇はもちろん、ハリウッド大作も黒澤明もヌーヴェル・ヴァーグも……。
文体は小気味よいおしゃべりのように読みやすく、ほどよくあらすじを紹介しつつも決して書きすぎることはなく。演出や構成の妙、映画技法にミクロに迫ったり、マクロな映画史視点から批評したりと自由自在。
また、手塚マンガに影響を与えた作品についての言及、世界的映画人との秘蔵エピソードも興味深い。文章家としての才にうなりながら、ともかくここにあげられた映画が観たくてウズウズしてくる!
雑誌の特集企画に答えた手塚の「外国映画史上ベスト10」「日本映画史上ベスト10」「SF映画ベスト10」などが掲載されているのもうれしいところ。
60年代の文章から晩年まで……手塚治虫という巨人の映画史という側面にも触れられる1冊である。
<文・粟生こずえ>
雑食系編集者&ライター。高円寺「円盤」にて読書推進トークイベント「四度の飯と本が好き」不定期開催中。
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