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『ベルセルク』 第39巻 三浦建太郎 【日刊マンガガイド】

2017/07/24


日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!

今回紹介するのは、『ベルセルク』

  
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『ベルセルク』 第39巻
三浦建太郎 白泉社 ¥580+税
(2017年6月23日発売)


今や日本を代表するダークファンタジー・コミック。白泉社・隔月刊行コミック誌「月刊アニマルハウス」に1989年に掲載されて以来、それまでの夢と幻想にあふれたファンタジーのイメージを一掃。

圧倒的な画力と重厚かつ恐怖と狂気をないまぜにしたストーリーが注目され、コミックだけでなく劇場版やテレビアニメ、家庭用テレビゲームといった各種メディアで展開されている。

その人気のほどは、コミック刊行部数が4,000万部(国内外累計)を突破したという事実からも明らかだ。

盟友・グリフィスの裏切りによって右目と左腕、そして帰るべき場所と愛する人たちを失った「黒い剣士」ガッツ。
身の丈ほどの巨剣「ドラゴン殺し」を背に、怨敵・ゴッドハンドとグリフィスを求める放浪の旅を続けている。
生贄の烙印を刻まれたガッツは常に悪霊や妖魔に命を狙われ、獣鬼やクシャーンの妖獣、幽霊船に海神といった難敵が次々と行く手に立ちはだかる。
この世ならざる者との苛烈な戦いこそがガッツの生きる世界なのだ。

しかし旅を続けるうちにガッツの心境も変わりつつある。
どす黒い怒りに身を任せていた頃は他者の事情や命を考慮せず、無慈悲で冷淡な部分が目立っていた(それだけに時おりかいま見せる人間性が際立って見えたのだが……)。
だがキャスカという守るべきものを見つけ、彼女の壊れた心を取り戻すのに自分ひとりでは力不足だと痛感してからは、仲間を顧みるようになり、周囲に気を配るだけの余裕も生まれてきた。

それでも彼の胸中には復讐心と狂気が凝り固まった「闇の獣(自らの負の面)」が潜んでおり、いつ果てるとも知れない戦いが獣の顕在化を促そうとする。
かけがえのない仲間をえたことで、妖魔だけでなく己の獣性との戦いもガッツは背負うことになってしまったのである。

ちなみに最新刊第39巻では物語の趣が少々異なる。
壊れてしまったキャスカの心を復活させる鍵となる約束の地「妖精郷」に到着。
妖精たちの長たる「花吹雪く王」との謁見を経て、魔術師・シールケとその弟子・ファルネーゼがキャスカの深層心理に足を踏み入れることになったのだ。

そこは黒い太陽が照らす薄闇の世界。不気味な魍魎(もうりょう)が跋扈(ばっこ)する世界で2人はキャスカの心の破片を拾い集めていく。
懸命な行いによって次第に心を取り戻したキャスカは「あいたいひとがいるの」と呟くが、はたしてそれはだれなのか。
彼女の心を縛る人物との邂逅(かいこう)は、ガッツに新たな試練を与えることになるのではないだろうか……。

と、物語が佳境に入ったところで本編は休載。続きが待たれるところである。

この期を利用して未読の方はぜひ最初から、ファンももう一度読みかえすことで、新たな冒険の開幕に備えるといいだろう。



<文・渡辺洋三>
アニメ界隈の仕事を生業にしてかれこれ20年余。最近グッときた作品は『BLAME!』。『ドラゴンクエスト ライブスペクタクルツアー』公式パンフレットにも参加しています。

単行本情報

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