日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『軍靴のバルツァー』
『軍靴のバルツァー』 第10巻
中島三千恒 新潮社 ¥580+税
(2017年7月7日発売)
ライフル、機関銃といった新たなテクノロジーと、それをもとにした新たな戦術が、騎兵による突撃や戦列歩兵戦術を終わらせようとしている時代を描く『軍靴のバルツァー』。
これまでは主に主人公のバルツァーと、彼に従う士官学校の生徒たちが、ライフル銃に鉄条網に機関銃、そして気球に新式砲撃戦術と、新技術、新戦術を武器に戦ってきたわけだが、今回、クーデター軍に追い詰められた彼らを救うのは、「ヒロイン」ヘルムート率いる騎兵隊。とっくに「時代錯誤」になったはずの騎兵突撃ががまさかのタイミングで炸裂するのだ。
今回の主役は敵も味方も騎兵。
おそらくはこれが滅びゆく騎兵という兵科が見せる、最後のきらめきなのだろう。
生徒たちが敵味方に分かれて争った「クーデター編」の終わりであり、騎兵の時代の終わりであり、そしてひとつの恋の終わりでもあり……。
そんな何重もの「終わり」が積み重なって、深い余韻を残す最新刊だ。
<文・前島賢>
82年生、SF、ライトノベルを中心に活動するライター。朝日新聞にて書評欄「エンタメ for around 20」を担当中。
Twitter:@maezimas