日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『めしにしましょう』
『めしにしましょう』 第3巻
小林銅蟲 講談社 ¥590+税
(2017年7月21日発売)
お風呂でローストビーフ、絹かけ丼(ウニをあんでとじた丼)、まつたけ1kgと肉1kgでつくる松茸すき焼き(的なもの)、牡蠣2kgを使ったリゾット……といった、だいたい毎回おいしそうなんだけどつくり方が楽しい料理を描いてきた本作。
「本当のでたらめとやりすぎの世界はこれからです」と第2巻のあとがきにあったことから、いやおうなく高まるこの第3巻への期待! そして好奇心!
今回もカバー裏マンガが亜空間なのがいい。
それはさておき、本作は人気漫画家とそのチーフアシスタントを中心に、なぜかマンガをあまり描かずに(だいたい締め切りをぶっちぎる描写がある)、他のグルメマンガでは読めないような豪快な料理が描かれるというもの。
料理の豪快さもおもしろいのだが、「脳というコンピュータの回路に包丁が刺さってるのかな?」という次元のズレたギャグが詰めこまれているのが最大の特徴。完全におもしろい。リズムがおかしい。
そんな変な脳汁が出てるテンションで行われる料理的行為、今回もいろいろ豪快。
たとえばカラスミと白子のパスタ。作中で「マイナス100点」て言われる表現だけど、カラスミ(卵)と白子だから「まさに交尾」であって、ちゃんとつくったらそりゃうまそうだよね、っていう。「ズビッおトロッとサクッと」「※うまいので「うまい」は省略しています」とかね、読む飯テロかよという。
あとなー、「愚者の祭典」と名付けられた、牛スジを中心にした名状しがたい感じのやつがやばい。
食べる前は「2食分はありますよ この…」といわれていたのが、いざ食べ始めたら「うまくて大量に口に入る」「さまざまな食感の濃いものどもが合体し 超大陸となって一度に攻め込んで来る」などと書かれており……やばい(語彙)。
そして何より「ファッチューチョン(佛跳牆)」。高級中華食材をこれでもかと叩きこむ国士無双みたいな料理が登場。これほんとにやったのか……。「生命は宇宙の眷属」……とか名言が出てくる勢い。
ウコッケイの脳とか、これらで蒸された「干し龍眼(リュウガン)」とか食べてみたい!(龍眼は、ライチやランブータンの仲間でめっちゃいい香りのするフルーツ)
これからもまだまだやりすぎででたらめな路線を突っ走ってほしいものである。
<文・永田希>
書評家。サイト「Book News」運営。サイト「マンガHONZ」メンバー。書籍『はじめての人のためのバンド・デシネ徹底ガイド』『このマンガがすごい!2014』のアンケートにも回答しています。
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