365日、毎日が何かの「記念日」。そんな「きょう」に関係するマンガを紹介するのが「きょうのマンガ」です。
8月22日はブルートレインが消滅した日。本日読むべきマンガは……。
『ドカベン』 第38巻
水島新司 秋田書店 ¥419+税
2015年8月22日、国内最後のブルートレイン寝台特急「北斗星」号が運転終了し、最後のブルートレインが終了した日。ブルートレインはその名のとおり青い客車の寝台特急列車で、1978年頃にはブルートレインブームを巻き起こすほどの人気を誇った。
そんな8月22日におススメしたいマンガが、『ドカベン』のブルートレイン学園戦だ!
ブルートレイン学園は東東京代表の高校。山田たちが2年生の夏の甲子園大会1回戦で当たった相手だ。
ブルートレイン学園はその名のとおり、列車業務に携わるエキスパートを育成するために国鉄が創設した学校で、なかでもブルートレイン科は夜走るための目や頭脳や感覚を育てることに重きを置いている専門課程。
隼(投)、朝風(三)、水穂(捕)、桜(一)、出雲(右)、瀬戸(中)、金星(左)、富士(遊)、夕鶴(二)と、ナイン全員に加えて監督の明星と、全員がブルートレインの列車名と同じ名字を持っている。
ブルートレイン学園の選手はみな俊足を誇っており(特急だから)、夜目が利くのが特徴。
そのため試合の前半はのんべんだらりとした展開でとにかく時間を稼ぎ、日が暮れるのを待つ。
宵闇の薄暗さで明訓がエラー続出し始めるなか、ブルートレイン学園は本領を発揮する。
バントとスクイズを繰り出し得意の俊足で出塁し、ついにスコアを逆転。
やがてナイター照明が点灯され、これで条件はいっしょになるかに思えたのだが、ピッチャー・隼の投げる山なりの超スローカーブの球道が右中間の照明の光のなかに入り、ボールが消えたように見える「はやぶさ投法」に明訓ナインは翻弄されてしまう。
一発芸の乱れ撃ちみたいな高校が、3回連続で甲子園に出場した強豪校・明訓高校を掻きまわすおもしろさ。
トリッキーな奇策を講じるはみだし者軍団が活躍する筋書きは、ナード系映画にも通じる痛快さがある。
イロモノと簡単にはあなどれない、なかなかになかなかなブルートレイン学園なのだ。
ちなみに2015年、最後に走ったブルートレイン「北斗星」は2段ベッドなどの内装部品を再利用し、「トレインホステル北斗星」に生まれ変わってJR馬喰町駅そばで営業中。
1泊2100円から利用できるので、ブルートレインのベッドに寝ころびながら『ドカベン』ブルートレイン学園戦を読むこともできるのだ!
<文・秋山哲茂>
フリーの編集・ライター。怪獣とマンガとSF好き。主な著書に『ウルトラ博物館』、『ドラえもん深読みガイド』(小学館)、『藤子・F・不二雄キャラクターズ Fグッズ大行進!』(徳間書店)など。学年誌の傑作ウルトラ記事を集めた新刊『学年誌 ウルトラ伝説』が発売中!4コマ雑誌を読みながら風呂につかるのが喜びのチャンピオン紳士(見習い)。