日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『シンギュラリティは雲をつかむ』
『シンギュラリティは雲をつかむ』
園田俊樹 講談社 ¥600+税
(2017年07月21日発売)
平和な街が突如として戦争に巻きこまれたその時、少年は祖父が隠していた秘密兵器・ヒト型の戦闘機でもって出撃する!
というあらすじだけなら『機動戦士ガンダム』から続くお約束の導入で始まる本作。
だけど、園田俊樹『シンギュラリティは雲をつかむ』がものすごく異質なのは、登場人物がものすごく自分の欲望に正直なところ。
カラコが戦おうとするのは、「街を守りたいから」でも「同級生の親が傷ついたのを見たから」でもなく、みんなに褒められたいというむちゃくちゃ個人的な理由。
おまけに一度、ヒト型航空機を飛ばしたカラコは、ヒト型で空を飛ぶことの魅力に取り憑かれてしまう。(この「ヒト型の航空機」なんてどう考えても飛ぶわけがない、飛んだところでメッチャ弱そうなものを、ちゃんと飛ぶし強いと思わせる説得力も見事!)
正直なのはカラコだけじゃなく、口ではきれいごとを吐きながら復讐に燃える(しかもなんか妙に楽しそうに)ヒロインもそう。
戦争のなかでしか自己実現できない、呪われたサガを持った少年と少女たちの物語を期待したい。
<文・前島賢>
82年生、SF、ライトノベルを中心に活動するライター。朝日新聞にて書評欄「エンタメ for around 20」を担当中。
Twitter:@maezimas