365日、毎日が何かの「記念日」。そんな「きょう」に関係するマンガを紹介するのが「きょうのマンガ」です。
9月11日は倉田てつをの誕生日。本日読むべきマンガは……。
『小学館文庫 仮面ライダーBlack』 第1巻
石ノ森章太郎 小学館 ¥629+税
1968年9月11日は、仮面ライダーBLACK=南光太郎……こと、俳優・倉田てつをの誕生日。
『君の名は』(大ヒットしたアニメ映画じゃなく1991年の連続テレビ小説)や『渡る世間は鬼ばかり』などの出演で知られる倉田だが、なんといっても当たり役は、前述のとおり、デビュー作である『仮面ライダーBLACK』と、その続編『仮面ライダーBLACK RX』の主人公・南光太郎だろう。
長い仮面ライダーシリーズの歴史のなかで、2年連続で主役を演じたのは、倉田が唯一。
それもあって、倉田が演じた光太郎=BLACKには、今も熱烈なファンが存在し、2009年にはTVシリーズ『仮面ライダーディケイド』に、2015年には映画『スーパーヒーロー大戦GP 仮面ライダー3号』に、堂々のゲスト出演。
最新ライダーを圧倒する存在感を見せつけていた。
さて、そんな人気作の『仮面ライダーBLACK』だが、原作者である石ノ森章太郎によるコミック版が存在する。
いやいや、「原作:石ノ森章太郎」というクレジットがあるのだから当然だろう、と思う方も多いかもしれない。
だがじつは、石ノ森が自らの手で“原作コミック”を手掛けたのは、初代『仮面ライダー』と『仮面ライダーアマゾン』(ただし『アマゾン』はネームは石ノ森の手によるが、作画はほぼ石川森彦が担当)、そして『仮面ライダーBLACK』の3作のみ。
ほかの石ノ森存命中に製作されたシリーズに関しては、キャラクターデザインや設定などでの参加に留まっているのである。
そんな「週刊少年サンデー」に連載された『仮面ライダーBlack』(TVシリーズとはタイトルのアルファベット表記が異なる)は、ニューヨークの下水道から始まり、パリのオペラ座や京都の一条戻橋と、世界を駆ける壮大な展開、とてもヒーローとは思えない異形の“バッタ人間”というライダーの造形、ときに首が飛び鮮血も吹き出すホラーテイスト……と、なかなかハード。
主人公・光太郎のキャラクター造形も、倉田の演じたTVシリーズのものとは、やや異なる印象だ。
特に終盤は、人類文明が崩壊(!)した未来世界、そこに君臨する謎の影、そしてヒーローとしてのアイデンティティ・クライシスを迎えるBlack=光太郎……と、石ノ森SF作品の真骨頂とでもいうべきストーリーが待っている。
TVシリーズを熱心に観ていたファンだからこその驚きが得られるコミック版なのだ。
なお、大のライダーファンかつ石ノ森信者として知られる漫画家・島本和彦も、『仮面ライダーBlack PART X イミテーション7』という番外編的な作品を執筆、「週刊少年サンデー30周年記念増刊号」に掲載している。
石ノ森の『仮面ライダーBlack』の要素を取り入れつつも、登場するBLACK=南光太郎の描写はTVシリーズ寄りと、島本のこだわりにあふれる傑作短編だ。
島本が担当した映画『仮面ライダーZO』のコミカライズをまとめた『仮面ライダーZO 完全版』に同時収録されているので、こちらもチェック!
<文・四海鏡>
石ノ森章太郎ファンのライター。好きな石ノ森作品は『番長惑星』など。ネオライダー世代。