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今回紹介するのは、『銀河英雄伝説』
『銀河英雄伝説』 第7巻
田中芳樹(作) 藤崎竜(画) 集英社 ¥514+税
(2017年8月18日発売)
はるかな未来を舞台に描かれる、帝国軍と自由惑星同盟の星間戦争。
150年にも及ぶ抗争のなか、歴史のいたずらが2人の天才をめぐり合わせる。
「常勝の天才」ラインハルト・フォン・ローエングラム。
「不敗の魔術師」ヤン・ウェンリー。
2人を軸に銀河の歴史の転換点が描かれる。
田中芳樹の不朽のSF小説『銀河英雄伝説』を、『封神演義』が再びテレビアニメ化されることでも大きな話題となっている藤崎竜がコミカライズ。
原作小説は文庫本にして10冊、さらに外伝が5冊という長大なシリーズだが、エピソードのなかの大きな出来事にスポットを当て、途中の流れを大胆に省略するかたちでグイグイと物語が進められていく。数多いキャラクターたちが藤崎流に咀嚼されていることもあってか、ダイジェスト的な印象を残さない。
この巻では両国の領土をつなぐイゼルローン回廊に位置する難攻不落のイゼルローン要塞の攻略作戦が描かれる。
堅牢な要塞に幾度となく煮え湯を飲まされてきた同盟軍を率いるのは、魔術師ヤン。望まないながらも同盟の英雄に祭りあげられたヤンの采配に注目が集まる。
また、この巻では女性たちの動向も魅力的だ。
ヤン・ウェンリーとは学生時代からの友人であり、アスターテ会戦で婚約者ジャン・ロベール・ラップを失ったジェシカ・エドワーズ、ラインハルトの姉・アンネローゼを慕い男装して警備にあたるヒルデガルド・フォン・マリーンドルフ、魔術師ヤンによるイゼルローン要塞攻略の成功を信じて疑わないフレデリカ・グリーンヒル。
歴史の大きなうねりに立ち向かう女性たちの強さが印象に残る。
ついに開始されたイゼルローン要塞の攻略作戦がどのように描かれるのか、続きが楽しみだ。
<文・秋山哲茂>
フリーの編集・ライター。怪獣とマンガとSF好き。主な著書に『ウルトラ博物館』、『ドラえもん深読みガイド』(小学館)、『藤子・F・不二雄キャラクターズ Fグッズ大行進!』(徳間書店)など。構成を担当した『学年誌 ウルトラ伝説』が発売中! 4コマ雑誌を読みながら風呂につかるのが喜びのチャンピオン紳士(見習い)。