複雑化する現代。
この情報化社会では、日々さまざまなニュースが飛び交っています。だけど、ニュースを見聞きするだけでは、いまいちピンとこなかったりすることも……。
そんなときはマンガを読もう! マンガを読めば、世相が見えてくる!? マンガから時代を読み解くカギを見つけ出そう! それが本企画、週刊「このマンガ」B級ニュースです。
今回は、「ついにあの謎肉の正体判明!?」について。
『日清食品 カップヌードルビッグ 帰ってきた謎肉祭W』
日清食品の「カップヌードル」といえば、世界的な大ヒット商品である。
肉の部分は公式には「ダイスミンチ」と呼ばれているが、成形して何が原料なのか不明なところから、一般的には「謎肉」の名称で親しまれてきた。
謎肉の正体は、いったい何なのかッ!?
発売から46年、公式ホームページで「カップヌードル46年目の告白」と題して『名探偵コナン』とコラボして、ついにその謎肉の原材料が明らかにされたのだ!
なんと謎肉の正体は、「肉と大豆由来の原料に、野菜などを混ぜて味つけしたミンチ」とのこと。
動物資源と植物資源を合わせた「近未来ハイブリッドミート」なのである!
ダイズだったのかッ!!
荒廃した世界で馬に乗って海岸沿いを走っていたら、目の前に巨大な大豆が現れて「大豆だったのかッ!!」と叫んでしまったような思いだ。ナニの惑星だ。
そもそも大豆は、肉食を禁じる仏教の精進料理では、肉のかたちに成形した大豆の料理があるように、もどき料理にも利用されてきただけでなく、「大豆は米にまさる」とか「畑の肉」といわれるように非常に栄養価が高い。
大豆を加工した食品はバリエーションが豊かで、日本の食生活に深くなじんでいる。
といったわけで今回は、マンガに見る大豆加工食品のアレコレを見ていきたい。
『もやしもん』 第3巻
石川雅之 講談社 ¥533+税
(2006年5月23日発売)
大豆を発酵させると納豆になる。
納豆が大々的にフィーチャーされた作品といえば『もやしもん』だ。
アニメはフジテレビ系列で2期(『もやしもん』『もやしもん リターンズ』)放映され、同局では実写ドラマ化もされた人気作である。
主人公の沢木直保は、幼い頃から「菌」が見えるという特殊能力を持つ。東京の農大に進学し、発酵をテーマに様々な研究をする「樹ゼミ」に出入りするようになった直保は、様々な菌について学んでいく。
「納豆食う関西人とツッコむ帰国子女」(第3巻収録)では納豆のつくり方や、日本文化での需要のされ方だけでなく、納豆菌の効果や可能性についても語られる。
まさか大豆によって地球環境の改造(テラフォーミング)まで可能とは……。
われわれの子孫が「大豆だったのかッ!!」と叫ぶ未来も、そう遠くないのかもしれない。
『ぼくんち』 上巻
西原理恵子 KADOKAWA ¥476+税
(2009年4月25日発売)
大豆を原料として醸造された調味料といえば、しょうゆである。
とにかく日本人はしょうゆが大好き。
「料理のさしすせそ」といえば、「し」はしょうゆ、「せ」はせおゆ、「そ」はソイソースというくらいだから、塩分過多で脳卒中まっしぐらだ。
なにしろ戦時中は、徴兵検査の前日にしょうゆを一気飲みすると、内臓疾患に見せかけて徴兵逃れができたというくらいだから、飲みすぎ御法度である。
しょうゆガブ飲みシーンが登場するのが『ぼくんち』だ。
貧しい田舎町で暮らす一太と二太、姉のかの子の生活を描き、第43回文藝春秋漫画賞を受賞した西原理恵子の傑作である。
2003年には観月ありさ主演で実写映画化もされた。
作中、金物ならなんでも買ってくれる「鉄じい」という人物が登場するが、この鉄じいが「体があったまる」といって、しょうゆをガブ飲みするのだ。
しょうゆを一気飲みすると、コップ1杯程度でも場合によっては死に至ることもあるので、絶対にマネしないようにね。
『頭文字D』 第1巻
しげの秀一 講談社 ¥524+税
(1995年11月2日発売)
そして大豆の搾り汁を固めた食品が豆腐だ。
日本を代表する豆腐マンガといえば、もちろん『頭文字D』ッ!!
主人公の藤原拓海は愛車のAE86型(ハチロク)を駆り、並み居るライバルたちとバトルで激突する公道レーシングマンガである。
フジテレビ系列で放映されたテレビアニメは、3DCGを用いたレースシーンと当時大流行していたユーロビートがマッチして大流行した。
拓海の超人的なドライビング・テクニックは、父親の営む「藤原とうふ店」の配送を手伝うため、中学生のころからハチロクを運転していたことに起因する。
そう、世界でもっとも有名な豆腐ブランドとは、「藤原とうふ店」なのだッ!
ちなみに旧暦九月の十三夜(じゅうさんや)は「豆名月」とされている。
十三夜は十五夜に次いで月の美しい夜といわれているが、今年2017年の十三夜は11月1日。
豆名月には大豆由来の謎肉カップヌードルを食べながら、大豆マンガを読んではいかがでしょうか?
<文・加山竜司>
『このマンガがすごい!』本誌や当サイトでの漫画家インタビュー(オトコ編)を担当しています。
Twitter:@1976Kayama