日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『ヒャッケンマワリ』
『ヒャッケンマワリ』
竹田昼 白泉社 ¥880+税
(2017年8月31日発売)
『ヒャッケンマワリ』は、白泉社の「楽園」に8年にわたり連載されていた1話完結型のエピソードコミック。
夏目漱石の弟子である作家・内田百閒(うちだひゃっけん)にまつわる数々の逸話をマンガ化している。
『冥途』『サラサーテの盤』といった不条理な幻想短編から独特のユーモアあふれる随筆群まで、大正から昭和にかけて幅広く活躍した内田百閒。鉄道マニアとしても知られ、元祖乗り鉄エッセイ『阿房列車』も有名だ。
本作は「酒」「借金」といったテーマごとに、ガンコでワガママ、でもお茶目な百閒先生を描きだす。
東京駅の一日名誉駅長になったものの大好きな特急を見送るのがイヤで思わず乗りこんでしまう……。「錬金術」と呼んでいた借金にまつわるあの手この手の失敗……。
クスッとくるものもあれば、「春の海」の作曲家で友人の宮城道雄や、愛猫・ノラとの別れのエピソードなどホロリとくるものもある。
著者の内田百閒への愛の深さを感じる1冊。
「内田百閒」、名前だけなら聞いたことあるかも、そんな人こそ手にとってほしい。
<文・卯月鮎>
書評家・ゲームコラムニスト。週刊誌や専門誌で書評、ゲーム紹介記事を手掛ける。現在は「S-Fマガジン」(早川書房)でファンタジー時評、「かつくら」でライトノベル時評を連載中。
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