『或る日、木曜会で。』第1巻
寺島らて マッグガーデン \571+税
(2015年2月14日発売)
どちらかというと個人的には世界文学のほうが好みだが、それでも「木曜会」という単語にはそそられる。
夏目漱石が週に一度の面会日として設けた木曜日の午後3時、彼を慕って若き未来の文豪たちがつどう。
そこは、文学を極めようとする者の小宇宙。なかでどんなやりとりが行われていたのか、覗いてみたいと思うのは当たり前だろう。
寺島らての『或る日、木曜会で。』の舞台はもちろん漱石宅。
漱石を崇拝していた青年・内田百閒を中心に、芥川龍之介、久米正雄、鈴木三重吉といった面々の交流を描きだす。
ときには将棋をさしたり、とりとめのない話をしたり、彼らがすごす時間はゆったりと流れていく。
文学的な堅苦しさはなく、夏目家の猫とじゃれ、歌舞伎のマネをしてははしゃぐ文学青年たちの表情はいきいきとしている。
特に、気むずかしい老人という内田百閒のイメージを覆す、心ゆれる若かりし百閒像が魅力的だ。
このマンガを読むと、きっと木曜会のメンバーの作品に触れたくなるはず。
まずは内田百閒の『ノラや』をオススメしたい。
<文・卯月鮎>
書評家・ゲームコラムニスト。週刊誌や専門誌で書評、ゲーム紹介記事を手掛ける。現在は「S-Fマガジン」(早川書房)でライトノベル評(ファンタジー)を連載中。
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