日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『サーカスの娘 オルガ』
『サーカスの娘 オルガ』 第1巻
山本ルンルン KADOKAWA ¥620+税
(2017年9月15日発売)
山本ルンルン作品を知る人なら“サーカス”というキーワード、「舞台は20世紀初頭のロシア」という手がかりだけで読む前から手ごたえを感じるはず!
ポップで洗練された絵柄、絵本のように楽しい世界のなかに時おり小さな毒やかげりがほの見える……まさに著者の持ち味がいかんなく発揮された作品だ。
主人公のオルガは、父親の死を機にサーカスに預けられる。
知らない大人たちのなかに放りこまれ、興業で各地を転々とする生活。
家族と別れてしまったさびしさを小さな胸に抱えるオルガだったが、ある日、一座の花形・ターニャの芸を目の当たりにして開眼。下働きの間を縫って、綱渡りの練習に励むようになる。
不意に訪れた舞台デビュー、そしてサーカスの上客である大富豪の男の子・ユーリィとの出会い。
オルガとは違い、何不自由のない暮らしをしているユーリィだが、彼もまた心に孤独を秘めている。そんなことを知ってか知らずか、2人は少しずつ惹かれあって……。
『シトラス学園』『はずんで!パパモッコ』などの作品で、子どもから大人まで広い人気を得る山本ルンルン。
画業20周年を迎え、これまでの作品とはまたひと味違う“大きな物語”としてのロマンが期待できそうだ。
<文・粟生こずえ>
雑食系編集者&ライター。高円寺「円盤」にて読書推進トークイベント「四度の飯と本が好き」不定期開催中。
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