日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『BREAK THE BORDER rebirth of ECHOES』
『このマンガがすごい! comics BREAK THE BORDER rebirth of ECHOES』
歩 宝島社 ¥690+税
(2018年3月9日発売)
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第7回『このマンガがすごい!』大賞で最優秀賞を受賞した歩『ECHOES』を原型とした作品。
女子バスケ部で活動しているヒロイン、五十嵐青(いがらし・せい)が、入部した時の話が描かれている。
中学時代はバスケひと筋だった青は、試合中に友だちに大怪我をさせてしまう。「もうバスケする資格はない」と思いこんで、入学した新緑高校でも、バスケ部には入らないつもりだった。
ある日彼女は、バスケの名門校が練習試合に来ていると聞き、様子を見にいく。
新緑高校バスケ部は、ひどい有様。強い弱い以前に、チームの連携がちぐはぐすぎた。
惨敗した新緑。ところが選手のひとり・新條飛鳥(しんじょう・あすか)が試合後に、声をあげた。
「もう1本やらせてください」
「5分でも1分でもいいんです もう1本だけ…」
明らかに目の色が違う彼女。再開された試合では、ボールひとつ取るために観客席に飛びこみ、怪我をも顧みぬプレイをする。
見ていた青の心臓が、大きく鼓動を打つ。
青と飛鳥を中心に描く、スポーツ群像劇。
『ECHOES』よりも青の視点が増えたことで、新緑バスケ部全体のまとまりのなさや部員たちの悩みが、よりわかりやすくなっている。
技術的には、そこまでヘタなチームではない。しかしチームワークが皆無に近いのだ。
なかでも本作では、3年のキャプテン・金子がひどく迷走している。
プライドが高く、感情的ですぐキレる。バスケは好きなようだが、ひねくれすぎていて情熱が感じられない。
2年の岡部はそんな彼女を煙たく感じており、たまにむき出しにする。んなもんだから、ほかの子たちのあいだでも空気がギスギス。
しかし、青はものすごくまっすぐで裏表のない子。じつは金子が幼なじみだったと知り、金子に抱きついて純粋に話しかける青。その姿は、分解寸前の部の雰囲気をがらりと変えた。
チームが強固なものとなるには、それぞれの技術の分担だけでなく、人間的なバランスも重要になってくる。
飛鳥は非常に優秀な選手で勝利への執念がものすごいが、ストイックすぎて人とのつながりを避けてしまっている。
青はまだテクニックは未熟だが、人一倍がんばり屋で、みんなをつなぐムードメーカーとして必須の存在。
両方いることで、プラスになる。
今作ではすべての部員のキャラ立ちがよりしっかりしたものとなっており、だれがどういう人間関係のポジションにあたるかが、わかりやすい。
注目したいのが、先生の立ち回り。
チームがぐちゃぐちゃなのは重々承知。だからこそ、青がきた時にはひっ捕まえて「いいぞ…!! 五十嵐青!」と不敵な笑みを浮かべるのが印象的だ。
部員、先生、マネージャーまでひっくるめて、ひとつの集団になっていくまでの物語が、これから見られそうだ。
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<文・たまごまご>
ライター。女の子が殴りあったり愛しあったり殺しあったりくつろいだりするマンガを集め続けています。
「たまごまごごはん」