『ウッドストック』第18巻
浅田有皆 新潮社 \560+税
(2014年10月9日発売)
ネットで架空のバンド“チャーリー”を名乗り、音源を発表していた無名の青年・楽(がく)が、リアルのバンド界に漕ぎ出していく……波乱に満ちたロックマンガがついに完結!
タイトルはもちろん、1969年にアメリカで開催された伝説のロックフェス“ウッドストック”から。
はるか40年以上も昔に、3日間で50万人もの観客を動員したフェスの名を冠した本作は、ひとつのバンドの成長物語にとどまらず、ムーブメントを作り出すバンドマンたちを描いた意欲作である。昔のロック伝説に憧れを抱きつつも、“現代にそれがありえるとしたら?”という作者の問いを登場人物たちに託した作品といえるだろう。
とにかく作者がどんなにロックを愛しているか、その熱が作品のすみずみから伝わってくる。
登場するバンドひとつひとつ、脇役のキャラクターのひとりひとりにまでしっかりと血が通っており……そのバンドマンがどんな音を出しているのか、つぶさに想像しながら描いている作者の姿が目に浮かぶ。
チャーリー解散後、東日本大震災の被災地でひとりボランティア活動に励んでいた楽だったが、偶然の出会いにより新しいボーカリストを迎えてバンドは再始動。
被災地で“自分たちのウッドストック”を開催する運びとなるも、同じ日に東京で大規模なチャリティーイベントをぶつけられ、さらには出演バンドを引き抜かれ窮地に立たされるチャーリーだが……。
ロックマンガというのは“成功”の落としどころをどこに持ってくるかが非常に難しい。チャーリーは“インディーバンド”のまま大舞台に立ち、世界的なミュージシャンとも対等な関係を築くが、彼らの“成功”はそうした実績や名誉では語れない。
作者のロックへの想い、そしてロックマンガを描くうえでの矜持を感じるラストを体感してほしい。
<文・粟生こずえ>
雑食系編集者&ライター。高円寺「円盤」にて読書推進トークイベント「四度の飯と本が好き」不定期開催中。
「ド少女文庫」