新装版『加納家の事情』上巻
小石川ふに 一迅社 \740+税
(2014年10月27日発売)
ラブコメ定番、「親が再婚して新しい妹ができました、突然のひとつ屋根の下暮らし、ドキドキ!」……という物語を描くのは、じつは難しい。あまりにも多く描かれすぎているからだ。
このテーマに真っ向から挑んだ作品。いっさい奇をてらうことなく、主人公の予備校生男子・正と、突然やってきた妹3人とのドキドキ生活を描いている。
やってきたのは、高校生のメガネっ子・ゆか(Aカップ)、中学生の元気っ子・ちか(Eカップ)、小学生のるか。
高校時代の正は、電車でいつもゆかを見ており、ひそかに憧れていた。彼女が家にやってくるのだから、健全な若者としてハッスルしないわけがない。
ちかとるかは天真爛漫。はやい段階から正に懐く。
正「わかりやすいのは安心できる。でも……わからないからドキドキできるってことも……」
ゆかと正はお互いを意識しすぎて、とても不器用。うまく距離を縮められない。
「恋愛」と気づいてしまった人間の、じれったい関係は、やっぱりおもしろい。
家族としての好意も、男女の好意も、時間をかけて築きあげるもの、という点をテーマにすえている作品だ。
急ぎ足の展開を作らない。丁寧にひとつずつ、加納家の会話と時間を描いていく。
もうひとりのヒロイン、中学生・ちかの、家族愛なのか男女愛なのかわからない感覚にスポットを当てているのも見どころのひとつ。
ゆかと違って、ちかの「好き」の感情はとてつもなくあいまい。どう受け止めてあげればいいのか。
家族の「LIKE」と恋愛の「LOVE」について、しっかり傷つく部分も含めて描いている。
言葉の選び方がとても繊細なラブストーリー。
だから、ゆかのAカップも、繊細な美乳なのだ。
<文・たまごまご>
ライター。女の子が殴りあったり愛しあったり殺しあったりくつろいだりするマンガを集め続けています。
「たまごまごごはん」