『隊務スリップ』第2巻
新田たつお 小学館 \551+税
(2014年10月30日発売)
新田たつおの最新作『隊務スリップ』が、あいかわらずアクセル全開だ。
舞台は核テロに見舞われた東京に替わり、静岡県熱海市に首都を移した、近未来の日本。続く不景気のため、失業者は600万人越え。国政の主導権を握る軍部により、徴兵制が復活――!?
そんななか、主人公・青乃盾が勤める饅頭屋の社長は、軍に商品を納入する権利と引き換えに店員らを軍隊に出向させる。ピラニア顔の教官にしごかれ、軍事訓練を余儀なくされる青乃ほかキャラの濃~い面々。
第2巻では、彼らがアフリカの戦地に赴くまでが描かれる。
その一方で、日本の真の独立を目指す軍部とそれを牽制したい政府、余剰社員を軍部に押し付けたい財界人、反戦思想家の思惑は1巻以上に絡みあい、ぶつかりあう。
それでいて、各パートのエピソードがしっかり交通整理されており、キャラクターの描きわけもはっきりしているので、読み手が混乱することはない。結果、ドライブ感は損なわれずこの多層的な物語世界に難なく没入することができる。皮肉たっぷりのギャグも、いいアクセントだ。
1巻では人類最弱の異名を取った青乃だが、2巻ではその能力の片鱗を垣間見ることができる。
今はまだ、その全貌は明らかになっていないが、政治家が決め、軍部が進め、名もなき人たちが最前線に駆り立てられる極限の戦場で、どのように“真の敵”を迎え撃つのだろう?
ああ、次巻が待ち遠しい。
<文・山脇麻生>
ライター&編集者。「朝日新聞」「SPA!」などにコミック評を寄稿。
Twitter:@yamamao