『兵馬の旗』第1巻
かわぐちかいじ(著)惠谷治(協) 小学館 \524+税
1868年の11月6日(グレゴリオ暦)は、日本を二分した幕末最大の内戦「戊辰戦争」で会津藩が降伏し、会津戦争が終結した日である。厳密にはこの前月に明治改元の詔が発布されたので、元号ではこの日はすでに「明治元年」になっている。
戊辰戦争について詳述すると、当レビューの文字数では100回分でも足りなそうなので説明は省くが、幕府対新政府の戦争において幕府軍の中枢として大きな役割を果たしたのが会津藩で、現在の福島・新潟・栃木にまで及ぶ国内有数の大身が最後まで徳川家を支え続けていたのだ。
『兵馬の旗』は、帝政ロシア時代のサンクト・ペテルブルクで偶然出会い、友情をはぐくんだ旗本の次男坊・宇津木兵馬と薩摩藩士・村田新八郎が様々な紆余曲折を経て、戊辰戦争で敵同士としてあいまみえるまでを描いた大河マンガ。
兵馬がロシアで貴族の娘アンナと恋に落ち、新八郎は大ケガを負ってまで駆け落ちを手伝う。にもかかわらず兵馬が幕府の窮状を救うべく単身で帰国したのを、新八郎が妻子を捨てたと“勘違い”してしまったことが、2人の対立のきっかけ。幕府と薩摩という帰属先が、2人の運命を悲劇に向かわせたともいえる。
信義を重んじる友情と武士としての覚悟が、歴史のうねりに巻きこまれる姿がじつにドラマチックだ。
作者のかわぐちかいじは同じ時期に「週刊モーニング」で『ジパング 深蒼海流』を連載開始。
武士の「始まり」と「終わり」を同時期に描いていたというのも感慨深い。
<文・富士見大>
編集プロダクション・コンテンツボックスの座付きライター。『衝撃ゴウライガン!!兆全集』(廣済堂出版)、『THE NEXT GENERATION パトレイバー』劇場用パンフレット、平成25年度「日本特撮に関する調査報告」ほかに参加する。