『キャプテン翼 ライジングサン』第2巻
高橋陽一 集英社 \418+税
(2014年11月4日発売)
1981年に「週刊少年ジャンプ」で連載がスタートした、国民的人気のサッカーマンガ『キャプテン翼』は、その後も改題&リスタートを繰り返しながら、いまなお物語を続けている。
現在「グランドジャンプ」で連載中の最新シリーズ『キャプテン翼 ライジングサン』では、主人公・大空翼はどのような状況に置かれているか? あらためて『キャプテン翼』シリーズに入っていくためには、おさらいが必要だろう。まずは過去のシリーズと大空翼の経歴を、現実の日本代表の成績と照らしあわせながら、振り返っていきたい。
幼少時よりサッカーに親しんでいた大空翼は、静岡県南葛市に引っ越して選抜チームの南葛SCにピックアップされ、そこから彼の輝かしいキャリアがスタートする。
南葛SCで全日本少年サッカー大会で優勝(6年生時)すると、中学時代には南葛中学で全国大会三連覇を達成。そして国際Jr.ユース大会(現実には存在せず。U-15相当)にて日本を優勝に導く。その後、15歳にしてA代表に初招集される。
ここまでが初代『キャプテン翼』でのストーリーだ。
そして『キャプテン翼 ワールドユース編』では、ブラジルのサンパウロFCでプロになった翼が、全日本ユース(現在のU-20)を率い、ワールドユース選手権(現在のFIFA U-20W杯)で優勝(現実の日本は1999年に準優勝)。
続く『キャプテン翼 ROAD TO 2002』では、サンパウロFCからFCバルセロナ(スペイン)へ移籍。当初はBチームに落とされるも、メキメキと頭角を現してトップ昇格を果たし、R・マドリッドとの伝統の一戦「エル・クラシコ」で大活躍する。
『キャプテン翼 GOLDEN-23』ではU-22日本代表として、五輪のアジア予選を戦い、五輪の出場権を獲得。
『キャプテン翼 海外激闘編 EN LA LIGA』では、リーガ・エスパニョーラで優勝し、現在連載中の『キャプテン翼 ライジングサン』ではマドリッド五輪の本大会(現実の日本は1968年メキシコ五輪で3位、2012年ロンドン五輪で4位)がスタートする。U-23日本代表はグループCに所属し、オランダ、アルゼンチン、ナイジェリアを相手にグループリーグの突破を目標とし、そしてメダル獲得を狙う。
なお、妻の早苗(旧姓は中沢で、愛称はあねご)は双子を妊娠中(短編では疾風と大舞の二子が登場も本編とは時間軸が違う)。こっちのほうも決定力は抜群だ。
今回の『ライジングサン』第2巻では、マドリッド五輪のオープニングゲーム(スペイン対カメルーン)がキックオフとなる。
そしてこの試合、日本中のマンガファンとサッカーファンを驚嘆させた、あの「ボール・セグウェイ」が再び登場する。蹴ったボールの上に飛び乗ってピッチ上をすべっていくという、まるでセグウェイに乗って移動するかのような衝撃の超絶ドリブルテクニックだ。
ひさびさに高橋陽一ワールド全開な、物理法則の横っツラに往復ビンタを食らわせるようなファンタジーアが、実戦の場で披露されるのだ。これは必見である。バモス・ヨーイチ、エル・ファンタジスタ。
ちなみに日本代表はというと、リトリートしたオランダ代表相手に攻めあぐね、ヴァイタルエリアの手前でムダにボールを回し続けるという、完全な「塩試合」一直線コース。くさびに入れたボールや横パスをサックリかっさらわれてカウンターから失点、あーはーん……、という最悪のケースになりがちな試合展開である。
強いチームほど90分間まともにプレイし続けるのではなく、リードしたらうまく「塩試合」に落としこんでくるものだ。現実のサッカーでも、あるある。超ある。
この局面を打開するために、日本代表はどのような手だてを打つのか? 翼はオランダ代表のゲームプランを崩せるのか? そこに注目して読み進めていこう。
『キャプテン翼』シリーズは、つねに現実のサッカーより「一歩先」を描き、ときには周囲から「そんなことありえない」「荒唐無稽すぎ」などと揶揄されながらも、きちんと現実のサッカー界が追いついてきた過去がある。日本サッカーにおいて「大空翼」は、いわばランドマーク的な存在であり続けてくれた。まさしく彼こそが、日本サッカー界を未来へと導く、ヤタガラスの翼なのだ。
だから翼よ、マドリッド五輪で金メダルを掲げてくれ。カンプノウを揺るがすようなスーペルなゴラッソを、見せてくれ翼!
<文・加山竜司>
『このマンガがすごい!』本誌や当サイトでのマンガ家インタビュー(オトコ編)を担当しています。
Twitter:@1976Kayama