『わっちゃんはふうりん』
サメマチオ 秋田書店 \680+税
(2014年11月14日発売)
デビュー単行本『マチキネマ』で注目され、その後もコンスタントに秀作を発表している著者の最新刊だ。
今回は、『サメマチオ随筆集 そういえば&といえば』と『ホテルサラマンダー』第2巻との3冊同時発売で、「サメマチオ祭り」状態! 祭りにはのるっきゃない!
3冊のなかで、一番しっとりとしているこのマンガの舞台は、女中や妾といった慣習が残る大正時代。家業を隆盛に導いた腹違いの兄、彼の愛人と一緒に暮らす事故で片足を失った稲造と、愛人わっちゃんとの物語だ。
稲造は劣等感に苛まれるも、優しくて、兄ともわっちゃんとも、距離感をつかみあぐねている。一方、わっちゃんにも事情があって……。彼女の過去があかされるとき、いびつで愛おしいふたりの関係は――。
行間を読ませる丹念な描写によって、読み心地は文芸作品のよう。
一方、古典的な少女マンガの文法もしっかりと押さえており、収まるところに収まる結末は、読んでいて心地よい。
最後の一コマの、素敵なことといったら。あの余韻を体験するだけでも、読む価値あり!です。
<文・かとうちあき>
人生をより低迷させる旅コミ誌『野宿野郎』の編集長(仮)。野宿が好きです。だらだらしながらマンガを読むのも好きです。