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『くちびるメロウ』粉子すわる 【日刊マンガガイド】

2014/12/06


KuchibiruMellow_s

『くちびるメロウ』
粉子すわる 一迅社 \647+税
(2014年11月15日発売)


人気のBL雑誌「gateau」に今年掲載された読み切り4編を収録した、粉子すわる初の単行本。
収録作品はいずれも、2人の男の出会いから心を通わせるまでの、戸惑いと初々しさに満ちた初期の恋模様が描かれており、胸キュン度の高いものとなっている。

巻頭を飾る「ビスク・ドール・レプリカ」は、伯父の店を手伝うため、久しぶりに北海道の小樽を訪れた主人公・考(こう)の物語。かつてこの地の人形展で見た1体の美しい人形を思い出していた考は、その人形とそっくりな人物・ユウが伯父の店で働いているのを見つけ……。
考とユウが出会い、惹かれ合い、そして心の距離を縮めていく様を、小樽のレトロな喫茶店と下宿部屋を舞台に、繊細に紡ぐピュアラブストーリーだ。

続く「はちみつねこ」は、猫カフェに勤務する2人のお話。ノンケの実は、自分から告白する形で色っぽさ満点のゲイ・しずると付き合って半年経つも、一度きりのキス以来進展がなく焦っていて……。
さらに「密室ファニーロマンス」では豪華寝台列車で出会った画家とピアニストの2人を、「人魚のいる景色」は水族館で働く水暉(みずき)と、遊び人で知られる三上を描く。

著者の巧みな舞台選びと絵柄の美しさによって、どれもどこかはかなげでせつない雰囲気をまとった、透明感あふれる作品ばかり。
巻末の書き下ろしで少~し進展を見せる考とユウの続編を希望すると同時に、粉子氏が描くキス以上のカラミ、もっと毒々しい愛憎や嫉妬の物語なども、この先楽しみだなぁ……(涎)。



<文・藤咲茂(東京03製作)>
美酒佳肴、マンガ、ガンダム、日本国と陸海空自衛隊をこよなく愛し、なんとなくそれらをメシのタネにふらふらと生きる編集ライター。

単行本情報

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