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『マイボーイ』第1巻 木村紺 【日刊マンガガイド】

2014/12/13


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『マイボーイ』第1巻
木村紺 講談社 \620+税
(2014年11月21日発売)


スーパーフライ級1位の日本ランカーを始め、若手有望ボクシング選手を4人も抱えるペンギンジム。
会長は今が稼ぎ時と大規模な自主興行に打って出るが、4人が4人ともまさかの惨敗を喫してしまう。そのうえ借金で破産して、ジム道具一式が差し押さえに!

そんななか、4人の選手を従えてジム再興に立ち上がったのは、なんと会長の孫娘で中学生の響。
女の子ながら知識とセンスに長けた響は、パワーとテクニックは持ちながら気が弱いハードパンチャー・佐藤を王者にすべく、度胸と度を超えた胸(巨乳!)で奮闘する。

女の子のキャラクターとセクシーなかわいらしさで見せていく、個性派ボクシングマンガ……と思って避けてしまう人がいたら、それはもったいない。
本作『マイボーイ』は、もちろん響の魅力でも楽しませくれるが、意外や意外、かなりの本格派スポーツ作品。
エピソードにまじえて描かれる理屈と理論は、数あるボクシングマンガのなかでも抜きんでている。ボクシングに詳しくない人でも、響の語るハウツーにはなるほどと納得させられるはず。

そもそも題材も絵柄も作品ごとに大きく変化し続けているのが作者・木村紺。新たな題材と絵柄(今回はかなりキャラクタライズされていてアニメタッチ!)へのチャレンジも納得だ。

ただ、常に女性が主人公ということあわせて、首尾一貫、木村紺の作風で変わらないものがある。それは登場人物に、きちんと「人としての矜持」があるということ。
礼儀や品格というべきか、それこそアスリートに求められるような、スポーツマンシップが感じられる。

響にしても、普段は生意気な口を利いているが、出向いたラーメン屋にジムの負けた選手たちがいるのを見て、彼女は店に入らず、声もかけないで帰ってしまう。

「アタシら部外者じゃん。負けた奴にかける言葉なんてねーもん」

こうした矜持が、響を、そして一見個性派の本作を、ストレートなボクシングマンガとして魅力的に見せている。
柔道じゃないが、心・技・体が揃っていて、さらに笑もさわやかな色もあるボクシングマンガ。注目の一作だ。



<文・渡辺水央>
マンガ・映画・アニメライター。編集を務める映画誌「ぴあMovie Special 2014 Autumn」が9月17日に発売に。『るろうに剣心 京都大火編/伝説の最期編』パンフも手掛けています。

単行本情報

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