『漫画家超残酷物語 青春増補版』
唐沢なをき KADOKAWA/エンターブレイン \690+税
(2014年11月25日発売)
唐沢なをきの名著『漫画家超残酷物語』の増補版が出た。
今年、惜しまれつつ休刊となった「月間IKKI」2000年12月号から連載を開始、2006年に単行本化されたもので、その後の『まんが極道』や『まんが家総進撃』といった作品につながる原点といえる。
(増補版には、新たに8ページの描き下ろし「夢をかなえたあと」が追加されている)
元ネタは永島慎二の『漫画家残酷物語』。
漫画家を目指す若者たちの栄光と挫折を描いた、60年代青春漫画の金字塔とされる短編シリーズで、同作に感銘を受けた唐沢はそのスタイルと魂を継承しつつ、業界の事情をアップデートして盛りこみ、持ち前のブラックな笑いをフレーバーしている。
『バクマン。』や『重版出来』など、いわゆる「漫画家マンガ」がヒットし、マンガ業界のさまざまな内情が一般にも知られるところとなった昨今。
いわゆる内部告発的なショックこそ薄れてはいるが、夢を追う若者たちの姿はやはり不変。やっとデビューが叶ったかと思いきや、無惨に打ち捨てられ、あるいは芽が出ずとも諦められず、歳老いてなお独り部屋に籠って悪あがきを続ける様は、まさに青春残酷物語!
マンガというジャンルに限らず、自分には才能があって、特別な人間になれるはずだと信じ、夢を追ったことがある人なら、誰もが身につまされること必至。
呉智英氏の「発酵臭が目に沁みた」という帯文よろしく、読みながら甘酸っぱいものがこみ上げてくるはずだ。
<文・井口啓子>
ライター。月刊「ミーツリージョナル」(京阪神エルマガジン社)にて「おんな漫遊記」連載中。「音楽マンガガイドブック」(DU BOOKS)寄稿、リトルマガジン「上村一夫 愛の世界」編集発行。
Twitter:@superpop69