『イーフィの植物図鑑』第3巻
奈々巻かなこ 秋田書店 \429+税
(2014年12月16日発売)
『イーフィの植物図鑑』は、『港町猫町』の奈々巻かなこによるファンタジー作品。
17世紀西ヨーロッパの架空国を舞台に、プランツハンターの少女イーフィが、父・アリオを連れ珍しい植物を求めて各地を巡る……。
ほわっとした絵柄に反して、扱われているテーマは重い。
植物との関わりを通じて、人間のエゴ、生命倫理や国家の意味まで読者に問いかける。
最新3巻でも、チリチリ鳴る音から魔よけとして使われる「猫の手スズラン」や、おいしいけれどときどきすごく苦い実が混ざる「モモトマ」といった架空の植物が登場。それにちなんだエピソードが展開される。
そして、全巻を通して焦点が当たるのが、父・アリオの存在。
アリオは死後に「妖精の草(ドワーフ・プランツ)」という寄生植物によって蘇り、動きはするものの、呼びかけには無反応……。彼は人間なのか、すでに植物なのか。
アリオに親子以上の感情を抱いているように映る、イーフィの心の動きも見逃せない。
<文・卯月鮎>
書評家・ゲームコラムニスト。週刊誌や専門誌で書評、ゲーム紹介記事を手掛ける。現在は「S-Fマガジン」(早川書房)でライトノベル評(ファンタジー)を連載中。
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