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『溶解教室』 伊藤潤二 【日刊マンガガイド】

2015/01/10


youkaikyoushitsu_s

『溶解教室』
伊藤潤二 秋田書店 \680+税
(2014年12月28日発売)


ホラーマンガ界の重鎮、伊藤潤二の最新作。
今年4月に約8年ぶりとなるホラー短編集『魔の断片』を出した著者だが、そこからわずか半年で新しい単行本が拝めるとは……。ファンとしてはうれしいかぎり。

さて、気がつけば妖怪ブームの昨今だが、こちらは「溶解もの」。
ある日、慶子のクラスに転校してきた、ちょっと影のあるイケメン眼鏡男子・阿津夕馬。彼は些細なことでペコペコと過剰なまでに謝り続ける「謝罪魔」だった。
どこまでも低姿勢な彼の謝罪に、当初は違和感を感じていた人も、やがて不思議な快感を覚えるようになり――。

ここ最近、謝罪会見がワイドショーを賑わせたが、その根っこにある人間の加虐心を「謝罪魔の青年」という設定でチクリと風刺。
日常レベルの些細な違和感を、やがて日本中を覆い尽くしてゆくカオティックなドログロ・ナンセンスホラーへと飛躍させてゆく、強引かつシュールなストーリーテリングは、さすが伊藤潤二!

今回、富江(『富江』シリーズ)と双一(『双一の勝手な呪い』ほか)に続く名キャラクターとして、夕馬の弟「ちずみ」が登場。
「ちずみの恋」では、緊迫状態のなか、突如真顔で冗談を言ってくるような、全身はおろか脳をも弛緩させる、著者一流のギャグセンスが炸裂! これはもう完全復活でしょう。

究極のSM兄妹、夕馬&ちずえのさらなるパワーアップを期待しつつ……。ルンルンで次作もお待ちしてます!



<文・井口啓子>
ライター。月刊「ミーツリージョナル」(京阪神エルマガジン社)にて「おんな漫遊記」連載中。「音楽マンガガイドブック」(DU BOOKS)寄稿、リトルマガジン「上村一夫 愛の世界」編集発行。
Twitter:@superpop69

単行本情報

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