『聖闘士星矢 完全版』第1巻
車田正美 集英社 \933+税
2月17日は「天使のささやきの日」。
いったいなんのことかといえば、1978年のこの日に北海道幌加内町にある北海道大学で、最低気温が氷点下41.2度に達したことに由来するもの。
しかし、気象庁の公式記録の対象に入っていない地域だったため、現在のところ日本の最低気温記録は旭川市で記録された氷点下41.0度ということになっているのだが、幌加内町では1987年からこの日を記念して「天使のささやきを聴く集い」というロマンチックなイベントを開催している。
そして「天使のささやき」とは、空気中の水蒸気が凍って発生する現象「ダイヤモンドダスト」のことである。
というわけで、マンガで「ダイヤモンドダスト」といえば、もちろん『聖闘士星矢』の主要キャラのひとりである白鳥星座の氷河(キグナス氷河)の必殺技以外にはありません!
異論があるとすれば、師匠である水瓶座のカミュも、氷河と対決したときには「その程度の技」と言っておきながら、ハーデス編では思いっきり自分も「ダイヤモンドダスト」を使っていたりするのだが……とにかく、それほど魅力的な技なのだ(たぶん)。
初めて氷河が「ダイヤモンドダスト」を使用したのは、のちに“愛されキャラ”と化す海ヘビ星座(ヒドラ)の市との戦い。
そしてカミュとの死闘で「オーロラエクスキューション」を体得したあとも、冥王ハーデス編では第三獄の番人・イワンに対し、「オレは天敗星の……」と名乗らせる前に瞬殺したのも忘れがたいネタ……いや、名場面。
……と、細かく挙げていくと若干ザコ敵ばかり倒しているような気もしなくはないのだが、いやいや、その美しい必殺技は、マンガ史に、そして読んだ人の記憶に残るものであることは間違いありません!
ほかにも「ペガサス流星拳」や「廬山昇龍覇」といった正統派のものから「ネビュラチェーン」や「クリスタルウォール」に代表される可憐な技、さらに「アナザーディメンション」のような当時としてはかなり斬新なものまで、様々な必殺技の表現が『聖闘士星矢』の魅力のひとつ。
もちろん『聖闘士星矢』は、ほかにもいろんな要素がつまった少年マンガの革命的作品なのだが、キャラクターの魅力が集約された「必殺技」にあらためて注目しつつ、読み返してみるのもいいんじゃないでしょうか。
<文・大黒秀一>
主に「東映ヒーローMAX」などで特撮・エンタメ周辺記事を執筆中。過剰で過激な作風を好み、「大人の鑑賞に耐えうる」という言葉と観点を何よりも憎む。