『株式会社ラブコットン』第1巻
樫の木ちゃん 集英社 \390+税
1868年の2月24日、江戸幕府がミシンの講習会を開いた。
1868年といえば、江戸時代最後の年。元号が明治に変わるのはこの年の10月23日、まさに新時代への移り変わりを予感させる出来事といえる。
わが国に最初にミシンが上陸したのは、1854年、ペリーが2度目の来航をしたときに将軍に贈ったものといわれる。
数年後には、ジョン万次郎がアメリカからミシンを持ち帰ったとの記録もある。もっとも、一般家庭にまで普及していくのは昭和、戦後のことになるのだが。
ファッションデザイナーを目指す少女マンガは古くからあるものの、そこに描かれる風景の多くはミシンではなく「手縫い」。
ショーなどに使う一点もの作品となれば、丁寧に時間をかけて手縫いで仕上げるほうがドラマティックではある!
そこへいくと『ご近所物語』(矢沢あい)では、ヒロイン・実果子がオリジナルデザインの服を売るにあたってミシンをかけている描写が。
売るために数を作るとなると、ミシンを使うのがまっとうではある。
さらに「売る」を軸にしたファッションマンガが『株式会社ラブコットン』である。
本作の主人公、高校1年生の成(なる)は、おしゃれにさっぱり興味がない。金銭感覚皆無の親に育てられた彼女の目標は、とにかく金持ちになること。
身を寄せていた祖母が経営する洋品店を閉めることになったのを機に、お金を稼ぐためにファッションブランド「ラブコットン」を立ちあげるのだ。
学校で仲間を募り、ファッションデザインと制作担当(♂)、モデル兼マヌカン担当(♀)、縫製担当(♂)をスカウト。町の洋服屋さんからステップアップしていくファッション&経営ストーリーだ。
主人公がクリエイターではなく経営に徹する作品はなかなかめずらしい。
成はファッションセンスは皆無だが成績優秀で、商品が思うように売れないときにさまざまなアイディアを繰り出すのが楽しい。
活動は部活っぽく見えるけど、目的はリアルに利を出すこと。「りぼん」に2007年から連載された作品だが、男女比1:1の高校生チームがビジネスに挑む物語は小学生女子にも新鮮な刺激を与えたのではないだろうか。
<文・粟生こずえ>
雑食系編集者&ライター。高円寺「円盤」にて読書推進トークイベント「四度の飯と本が好き」不定期開催中。
「ド少女文庫」