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2月27日はフランス王アンリ4世が戴冠した日 『王妃マルゴ』を読もう! 【きょうのマンガ】

2015/02/27


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『王妃マルゴ』第1巻
萩尾望都 集英社 \619+税


1594年2月27日は、アンリ4世がフランス王に戴冠した日である。

16世紀末のフランスは、宗教戦争(ユグノー戦争)にフランス王位継承問題が絡み、複雑な対立構図となっていた。
当時のフランス王アンリ3世、ギーズ公アンリ、そしてナバラ王アンリが争っていたことから、「三アンリの戦い」と呼ばれている。この「三アンリの戦い」を制したのがナバラ王アンリで、彼はアンリ4世としてフランス王となり、ブルボン朝が開かれた。
王となったアンリ4世はナントの勅令を発し、およそ40年つづいたユグノー戦争に終止符を打つ。
数々の政策によって内戦で疲弊したフランスを立て直し、「良王アンリ」と称された明君である。古今を通じもっとも国民に愛されたフランス王で、現代でもその人気は高い。

そんなアンリ4世が登場するのが、萩尾望都『王妃マルゴ』である。
主人公のマルゴは、フランス王アンリ2世(前述のアンリ3世の父)と王妃カトリーヌ・ド・メディシスの娘で、正式な名前はマルグリット・ド・ヴァロワという。『三銃士』や『モンテ・クリスト伯』で有名な小説家アレクサンドル・デュマが、小説『王妃マルゴ』の主人公にしたことでも有名である。
ナバラ王アンリ(アンリ4世)は名うてのプレイボーイで、女性遍歴も華やかだが、彼にとって最初の結婚相手となったのがマルゴであった。……もっとも、マルゴのほうも、若い頃から絶世の美女としてもてはやされ、アンリ4世に負けず劣らず、数々の浮き名を流しているのだが。

萩尾望都『王妃マルゴ』は、マルゴの一代記で、物語はマルゴの幼少時からはじまる。
前述の三アンリとマルゴは、ともに幼少時をシャルル9世(作中でのシャルル、マルゴとアンリ3世の兄)の宮廷で育った間柄である。
のちに争う3人が宮廷で無邪気にふざけあっていたり、ナヴァル王子アンリ(のちのアンリ4世)とマルゴの出会いがあったり、1巻の内容はのちの歴史を知っているほどにドキドキしてしまう。

幼少期のアンリ4世の、田舎育ちの奔放さに、のちに「良王」となる陽性のカリスマを見ることができるし、マルゴが見せる子どもらしくない傾城の悪女、陰性の魅力がぞんぶんに発揮されている。本人に自覚のない、天然で男を狂わす色香……なんて、文字で説明できても、なかなかマンガで表現できるものではない。
大ベテラン・萩尾望都の紡ぎだす世界に、ぐっと引きこまれる。

日本人にとって決してとっつきやすい題材ではなく人物相関図も複雑だが、歴史物語としてではなくアンリとマルゴの恋模様に注目して読み進めていれば、いつのまにか「三アンリの戦い」の歴史背景が頭に入っているだろう。



<文・加山竜司>
『このマンガがすごい!』本誌や当サイトでのマンガ家インタビュー(オトコ編)を担当しています。
Twitter:@1976Kayama

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