新装版『ロックマンメガミックス』第1巻
ありがひとし 復刊ドットコム ¥1800+税
(2015年2月21日発売)
オビには「再再再復刻の新装版!」と高らかに謳った文字。
最初の講談社版→エンターブレイン版→ウェッジホールディングス版、そして今回の復刊ドットコム版で、原作ゲーム的に言えば3回目のコンティニューだ。
元祖ファミコン版のアクションゲームが登場してから20数年、様々なメディアに展開されてきた『ロックマン』シリーズ。
そのなかでもありがひとし(有賀ヒトシ)のマンガ版は、原作ゲームの生みの親・稲船敬二さんが「もうはっきり言って、有賀さんのロックマンは本物だと思っているんで」(2009年版への寄稿を今回も再録)と、太鼓判を押すぐらいの特別な存在だ。
『ロックマン』シリーズは、ひとことで言うと「悪の博士に操られたロボットの暴走を、正義のロックマンが止める話」だ。
とてもシンプルだが、マンガの神様・手塚治虫の『鉄腕アトム』の葛藤を受け継ぐ図式でもある。ロボットにとって幸せとは何か、人のわがままで壊されるロボットが反乱を起こしてはいけないのか、という普遍的で深いテーマにもつながるのだ。
『メガミックス』のロボットたちには、心が宿っている。
悪の回路に取り憑かれながら、ロックマンのひたむきさに動かされて爆発寸前の動力炉のありかを教えるエレキマン。2人がかりでロックマンを倒そうとする味方を排除してまで一対一の勝負にこだわるクイックマン。原作ゲームでは憎き中ボスだったイエローデビルMk-IIがつぶやいた「M」とは、「MOTHER(母)」だった……。
血の通ってないロボットなのに、温かいハートがあるのだ。
基本的に(第1話を除く)原作ゲームから数日~数ヶ月が経った世界を描く後日談だが、以前のシリーズのキャラは、ほとんど誰も退場しない。ロックマンの兄弟や元ライバルたちがどんどん味方になり、どんどんバトルがド派手になる!
この『メガミックス』第1巻を買った人は2巻も、さらに復刊が決まってる続編『ロックマンギガミックス』全巻もそろえないと後悔するだろう。
そして、ふだん本シリーズでは漢字カタカナの「有賀ヒトシ」のはずが、今回「ありがひとし」名義になってるのは、後者のペンネームで執筆した作品のほうが、ゆるりと重版がかかったりドラマ化もあったり……というゲン担ぎのためとのこと。
今度こそ版を重ねますように、いちファンとして祈りたい。
<文・多根清史>
『オトナアニメ』(洋泉社)スーパーバイザー/フリーライター。著書に『ガンダムがわかれば世界がわかる』(宝島社)『教養としてのゲーム史』(筑摩書房)、共著に『超クソゲー3』『超ファミコン』(ともに太田出版)など。