『しあわせ半分こ』
高橋千鶴 講談社
3月17日は「聖パトリックの祝日(緑の日)」……といってもピンと来ないかたがほとんどと思われるが、そもそもこれはアイルランドの祝祭日。
アイルランドにキリスト教を広めた聖人・聖パトリックの命日を盛大に祝う日で、アイルランドの国花・シャムロック(三つ葉のクローバー)や緑のものを身につけると、幸せになるといわれているとか。
アイルランドだけでなくイギリスやアメリカなどでも「緑色のものを身につけて祝う日」として、ポピュラーな行事となっている。
じつは日本でも1992年より、日本とアイルランドの文化交流を目指す団体「アイリッシュ・ネットワーク・ジャパン」により、3月には東京・原宿をはじめとする各地で「セント・パトリック・デイ・パレード」が行われているのだ。
さて、幸運のシンボルといえば「四つ葉のクローバー」なわけだが、もとはといえば「三つ葉のクローバー」がその元祖。四つ葉は“三つ葉”の変異体で、要は「三つ葉より珍しいから、見つけるとよりラッキー」……ということらしい。
『しあわせ半分こ』は、まさに仲よし姉妹が四つ葉のクローバーを見つけるところからスタートする、アットホームなラブコメディ。
取り合ったために、四つ葉のクローバーはちぎれて真っ二つに。仕方なしに2人は半分ずつ、お守りとして持つことにするのだった。
中3の章子と、中2の彩子は、親友のように気が合う姉妹。
共通点は面食いで惚れっぽいところ。好みが同じすぎて、しょっちゅう同じ人に恋をしてしまうのは困りものだが……ケンカしたり仲直りしたり協力しあったりしながら、それぞれの幸せに一歩ずつ近づいていく様がなんとも微笑ましい。
高橋千鶴は、近年、1980年に発表された『コクリコ坂から』(原作:佐山哲郎)がスタジオジブリによって映画化され、注目を集めた漫画家。本作は『コクリコ坂から』と同じ年に「なかよし」に発表された作品である。
少女時代の恋に恋する憧れ、そして本当の恋心に目覚めていく気持ちをみずみずしく描いたエバーグリーン的な物語だ。
<文・粟生こずえ>
雑食系編集者&ライター。高円寺「円盤」にて読書推進トークイベント「四度の飯と本が好き」不定期開催中。
「ド少女文庫」