『ワールドトリガー』第10巻
葦原大介 集英社 \400+税
(2015年3月4日発売)
今もっとも脂がのっているバトルマンガこと『ワールドトリガー』の最新刊。
「近界民(ネイバー)」と呼ばれる異世界からの侵略者と戦う少年少女の物語だが、この巻では最近の山場だった「大規模侵攻」が一段落。
主人公たちが属する「ボーダー」という組織が、味方に死者を出してしまったことなどをマスコミに詰め寄られるという事態になってしまう。
そこで組織が打ち出したのは、主人公・三雲修をスケープゴートにしてしまおうという計画。
はたして三雲は、映画『ダークナイト』のバットマンのように、自分をスケープゴートにすることで場を丸く収めようとするのだろうか?
もうひとりの主人公・遊真は三雲に言う、「つまんないウソつくね」と。
そしてこの巻の後半では、大規模侵攻のために中断されていた「ボーダー」内の団体戦が再開。
適性的には落第生である三雲と、圧倒的な強さと経験をもつ遊真、そして未熟ながら超強力な潜在力をもった千佳の3人の今後の活躍も楽しみ。
近界民との戦い、団体戦、そのあいだに挟まれているのは、三雲が大人の論理にひとりで立ち向かう姿。ここではオトナとコドモの戦いがあったと言うべきでしょう。
「ヒーローとは何か」を今でも問い続け、答えを描き続ける傑作です。
<文・永田希>
書評家。サイト「Book News」運営。サイト「マンガHONZ」メンバー。書籍『はじめての人のためのバンド・デシネ徹底ガイド』『このマンガがすごい!2014』のアンケートにも回答しています。
Twitter:@nnnnnnnnnnn