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『春の包帯少女』第4巻 佐藤ミト 【日刊マンガガイド】

2015/04/05


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『春の包帯少女』第4巻
佐藤ミト ほるぷ出版 \570+税
(2015年3月12日発売)


高校生のカップル、夜桜ハルと星見ナツが暮らす街では、連続放火事件が発生していた。
じつは、ハルにはものを発火させる力があった。そして、その力でナツに大火傷を負わせてしまい、級友たちからは放火犯の疑いをかけられることになる。
その疑惑は、回復したナツの証言(もちろん嘘なのだが)により払拭されるが、そうしたなか2人の高校に、満月アキという女子高生が転入してくる。アキは、正義感が強く、放火事件で母親を失ったこともあり、連続放火犯に対しても強い復讐心を持っている。
そのアキが2人のことを怪しみだして……というのが、導入部分。

連続放火犯は誰なのか?(ハルの別人格が犯人、という可能性も否定できない)
お互いに秘密を抱えたハルとナツの恋の行方は?
といった、ラブストーリーに事件のサスペンスが織りあわされた作品である。

発火現象を目の当たりにし、火傷を負ってもハルを信じ続けるナツ。武道に長けていて、人に痛みを与える者には、自らの力で痛みを実感させる、という強烈な正義感の持ち主アキ。
2人は作中でも男子高校生の人気を二分するのだが、キャラの立ったヒロインは読者をひきつける。

『春の包帯少女』は、WEBコミック「COMICメテオ」に連載後、書籍としてまとめられたもの。
佐藤ミトは「COMICメテオ」主催の第1回G-mode新人コミック大賞に「妄想ミーツガール」を投じて、2012年準大賞を獲得した(ちなみに「妄想~」は第2巻の巻末に収録)。本作がデビュー作となる新人である。

本作は、現在でこそ「『LINEマンガ』でランキング第1位獲得!」という帯をまとって、人気をアピールしているが、第1巻発売当時にはそうしたものはなかった。
あまりなじみのない版元の新人作家の作品を手に取らせたのは、表紙の絵の力で、まさに「ジャケ買い」状態であった。顔の半分に包帯をまとい、せつなげな表情で手を差し伸べる少女のビジュアルには、それだけインパクトがあったのだ。

ストーリー面では、ちょっと気になる部分もあったりするのだが(たとえば、2巻で語られる「この街では、放火事件以前から不思議な事件が発生していて云々」という伏線めいた件が回収されていないとか)、そうした支流部分は気にさせない勢いで、本流のラブストーリーは流れていく。
全4巻を一気に読ませる疾走感が本書の魅力なので、未読の方は完結を機に、まとめて手に取ってみられてはいかがだろうか。



<文・廣澤吉泰(ひろざわ・よしひろ)>
ミステリ漫画研究家。「ミステリマガジン」(早川書房)にてミステリコミック評担当(隔月)。『本格ミステリベスト10』(原書房)にてミステリコミックの年間レビューを担当。

単行本情報

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