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4月14日は椅子の日 『ぼくらの』を読もう! 【きょうのマンガ】

2015/04/14


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『ぼくらの』第1巻
鬼頭莫宏 小学館 \562+税


4月14日は「4(よい)1(い)4(す)」……ということで「椅子の日」。
成り立ちはやや苦しい気がしないでもないが、新生活が始まるこのシーズンにはじつにふさわしい記念日である。

椅子というのはこだわりはじめるとキリがないものだが、たとえば座り心地や機能性、あるいは見た目の美しさなどなど、どこに重きを置くかは人それぞれ。
それゆえにどういった椅子をチョイスするかによって、その人の性格や価値観というのが見てとれるところも大きいだろう。

そして、そんな「椅子の選択」が象徴的に描かれるマンガが『ぼくらの』だ。

あらためて『ぼくらの』の内容について触れておくと、地球の命運をたくされることとなってしまった15人の少年少女たちが、謎の多い巨大ロボット「ジアース」によって戦いを続ける物語。
対戦するロボットは、無数に存在する「平行世界の地球」から同じく選ばれた者たちが操縦しており、敗北した側はその地球ごと全員が滅んでしまう。しかも、ジアースの動力源は操縦者の命であり、戦闘に臨んだ者は、勝とうが負けようが結局は死んでしまうというあまりにも過酷な運命にある。
『ぼくらの』はたしかに巨大ロボットものというジャンルなのかもしれないが、作品の本質は「いかに確定した死と向きあって、納得するのか(もしくはできないのか)」を描くことにある。

なんだか言葉で説明するととてつもなく重たいマンガのようだし、実際のところめちゃくちゃシリアスではあるのだが、これがただ鬱々とした話なのかといえばそうでもない(と、個人的には思う)。
少なくとも、悔いを残さず、意味のある死を迎えることができた少年少女たちについては、ハッピーエンドではないにせよ、バッドエンドではないはずなのだ。
美しく死ぬことのなかった者も、それはそれで考えさせられることは多く、どのエピソードも読み手によって受けとりかたは千差万別だと思うので、解釈については「とりあえず読んでください」とだけ言っておこう。

そして、ジアースのコクピットは基本的には何もない空間なのだが、操縦者の座るシートが、それぞれが心のなかで思い描く椅子が複製されたものになるというところが非常に独特なポイント。
それは愛用の品であったり、あるいは大切に想う人と関連が深いものだったりするのだが、アーロンチェアらしきハイテクチェアから座布団まで、そのひとつひとつには生き様が反映されている。
多くを語らずに椅子ひとつでキャラクターを描写するとは、そのことひとつだけでもこのマンガはスゴい。

まぁ、こんな極限状況は普通に生きていればないとは思いますが、お気に入りの椅子のひとつぐらいは決めておきたいもの。現実問題として、椅子のチョイスは健康にも関わる大事なことですからね。



<文・大黒秀一>
主に「東映ヒーローMAX」などで特撮・エンタメ周辺記事を執筆中。過剰で過激な作風を好み、「大人の鑑賞に耐えうる」という言葉と観点を何よりも憎む。

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