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『日々ロック』第6巻 榎屋克優 【日刊マンガガイド】

2015/04/15


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『日々ロック』第6巻
榎屋克優 集英社 \514+税
(2015年3月19日発売)


2010年の「週刊ヤングジャンプ」27号より突如始まった『日々ロック』の衝撃を忘れない。
17歳の冴えない童貞ソーヤングの日々沼拓郎=日々ロックが、むちゃくちゃにアコギをかきならし、むちゃくちゃな歌詞を叫びまくる泥臭く暑苦しいストーリー。

全8話のミニ連載は、ブルドーザーで体育館ぶっ潰すという、破壊の美学を貫いてジ・エンド。
唖然とした。呆然とした。
無名の新人・榎屋克優は、連載スタート時点で弱冠22歳。瑞々しい感性と衝動だけでペンを走らせたことが、イヤというほど伝わってきた。

この第1巻の反響を得て、『日々ロック』はリスタート。
日々沼は高校卒業後に上京し、ザ・ロックンロールブラザーズを率いてライブ三昧。めきめきと実力をつけ、インディーズでCDをリリースし、ついにはアメリカツアーを行うまでとなった。
第5巻では短い時間ながら、武道館のステージにも!

最終6巻では、武道館で燃え尽きたザ・ロックンロールブラザーズがバンドに一区切りをつけることを決意する。
やりたいことはやりつくした、歌いたいことも全部歌ったとばかりに、焼鳥屋のバイトに精進する日々沼。
しかし、ともに切磋琢磨してきた宇田川咲が重い病気と戦いながら、それでも懸命に歌う姿をネット上で目にしたことで、もう一度だけザ・ロックンロールブラザーズでライブを行おうと奮起する。
はたしてラストステージはどこになるのか?

足かけ5年で榎屋の画力も構成力も飛躍的に上昇し、昨年には入江悠監督のメガホンで実写映画化。加速度的に成長をとげる作者と作品に、初期からのファンは戸惑いを覚えたことだろう。
しかし日々沼だって、いつまでもパンツ一丁とアコギ1本で歌っているわけにはいかない。
「デビューアルバムこそが最高!」と言われてしまうのはロックバンドの宿命である。衝動が薄れていくなかで、しっかりと前を向き、何を残していくのかが大切なのだ。

それでも……。それでも、だ。
「あのときの気持ちよ、もう一度」とばかりに、日々沼たちはゼロからやりなおす。

僕のやりたいときに/やりたい場所で音楽をやる
だから続けられるんです/どんなにさげすまれても
どんなにみじめに見えても/どんなに笑われたって
(日々沼拓郎/第3巻・第29話より)

ラストステージは日々沼が17歳の「日々ロック」を取り戻し、画面からハミ出さんばかりのフルボリュームで激唱する。
日々沼の象徴だった大仏パーマに期せずして回帰する奇跡に心がカーッと熱くなった。
正真正銘のロックマンガ、全6(ロック)巻で、これにて完結!



<文・奈良崎コロスケ>
68年生まれ。マンガ、映画、バクチの3本立てで糊口をしのぐライター。中野ブロードウェイの真横に在住する中央線サブカル糞中年。地元・立川を舞台にしたゲッツ板谷原作の映画『ズタボロ』(橋本一監督/5月9日公開)の劇場用プログラムに参加しています。
「ドキュメント毎日くん」

単行本情報

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