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『ワルキューレ』土屋ガロン(作)和泉晴紀(画)【日刊マンガガイド】

2015/04/18


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『ワルキューレ』
土屋ガロン(作)和泉晴紀(画) KADOKAWA/エンターブレイン \780+税
(2015年3月25日発売)


『ルーズ戦記 オールド・ボーイ』『リバースエッジ 大川端探偵社』(ひじかた憂峰名義)など、映像化も多数。
マンガという枠にとどまらない、ハードボイルドかつ幻想的な独特の世界観で熱烈なファンが多い漫画原作者、狩撫麻礼の土屋ガロン名義による最新作。

ありふれたダメ青年ヒロシは、ある日、ヤクザのような男たちに日給10万で大作映画に主演しろとスカウトされる――。

映画から啓示を受けたSM女王、彼女に映画を教えた謎の老人、金と権力をもてあました日本の財政界のフィクサー、VIP専門の心理カウンセラー女医……。
映画という「大いなるヴァーチャル」をめぐり、さまざまな人物の夢と欲望と資金と狂気が交錯し、暴走してゆく壮大なダークロマン世界は、いかにも狩撫麻礼!

画を手掛けるのは和泉晴紀。
久住昌之との共作ユニット・泉昌之名義で『かっこいいスキヤキ』『食の軍師』を描いてきた人だけに、ハードボイルドなシーンもギャグ!? と錯覚してしまう瞬間が何度もあるのだが、そんな違和感もケレン味たっぷりのストーリーとスリリングなせめぎあいをかもし出す。

資本主義という怪物、ワルキューレの戯曲と神話。
アドレナリン・ジャンキーの暴走する欲望は、やがて現実と脳内世界のボーダーを超えて……。

おもわず口あんぐりのラストまで問答無用で突っ走る、カタルシス炸裂の一冊。
これ映画化されたら『地獄でなぜ悪い』とタメを張る怪作になりそうだなあ~と早くも妄想。
フツーのマンガでは満足できない、アドレナリン中毒者はぜひ!



<文・井口啓子 >
ライター。月刊「ミーツリージョナル」(京阪神エルマガジン社)にて『おんな漫遊記』連載中。「音楽マンガガイドブック」(DU BOOKS)寄稿、リトルマガジン「上村一夫 愛の世界」編集発行。
Twitter:@superpop69

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