『フレラジ☆』第2巻
種田優太 芳文社 \819+税
(2015年3月27日発売)
アニメにとって「声優」の存在感はとても大きい。
役者という側面はいうまでもないだろうが、アニメ関連誌はどれも声優のグラビアで彩られ、声優が歌うCDはオリコンの上位にランクインし、アニメ系イベントといえば声優のステージが盛況をみせ、声優がパーソナリティを務めるラジオ番組が日々膨大に放送されつづける――。
筆者も以前、その年のアニメトピックを振り返る記事で、声優ラジオ番組『洲崎西』をとり上げたことがあったが、それとて単なる個人的な嗜好の問題ではなく、アニメを論じるにせよアニメの需要やビジネスを論じるにせよ、声優(ひいては独自の文化圏を生み出している声優ラジオ)というファクターは無視できないと感じたためだ。
種田優太の『フレラジ☆』第2巻は、そんな声優ラジオをモチーフにした4コママンガの最終巻である。
作中で描かれる声優ラジオ「フレラジ」のパーソナリティは4人。
あがり性の朱木茜と、アメリカ帰りの青柳葵は幼なじみ。墨田圭は台本以外はスケッチブックを通じてしかしゃべれず、山吹薫は歌が苦手。
演技力のみならず、バラエティ的話術や歌唱力まで求められる現代の若手声優としては、それぞれ致命的な欠点を持ったこの4人が、ラジオを通してそれを克服していく、というのが当初設定された番組コンセプト。
作品はラジオ企画の打診から、番組打ちあわせ・リハーサルや放送本番の模様はもちろん、ラジオ局のイベント、アニメのオーディション、インタビュー取材、アニメの顔あわせ、アフレコ現場、ラジオの公開録音といったファンならのぞき見てみたい舞台裏を、取材に裏打ちされた知識をもとに、まったりとコミカルに描き出す。
『きんいろモザイク』や『ご注文はうさぎですか?』といった「きらら」系アニメがスマッシュヒットを飛ばし(そして『ゆゆ式』がカルト的人気を博し)、アニメ制作現場のバックヤードを描いたアニメ『SHIROBAKO』や小説『ハケンアニメ』が話題を集める昨今、コミックスだけでなく今後アニメでも観てみたい1作である。
<文・高瀬司>
批評ZINE「アニメルカ」「マンガルカ」主宰。ほかアニメ・マンガ論を「ユリイカ」などに寄稿。インタビュー企画では「Drawing with Wacom」などを担当。
Twitter:@ill_critique
「アニメルカ」