『江川と西本』第1巻
森高夕次(作) 星野泰視(画) 小学館 \552+税
(2015年4月23日発売)
漫画家・コージィ城倉としては、東京六大学野球に材をとった『ロクダイ』を連載中、そして大ヒット作『グラゼニ』の原作を手がける森高夕次。
その最新作は、意外やノンフィクション!! 1980年代、読売巨人軍のエースを争った2人の男、江川卓と西本聖の物語である。
江川といえば高校時代から「怪物」の異名をとり、全国的に知られた怪腕投手。
高校卒業時にドラフト1位指名を受けるも、大学進学を選択。法政大学時代も華々しく活躍し、再びドラフト1位指名されたが、希望する在京球団ではないという理由から入団拒否……翌年すったもんだの末に巨人に入団した「空白の1日」事件で世間を騒がせた人物だ。
一方の西本は、江川に比べるといぶし銀的な存在で……もしかすると当時の野球ファンでなければピンとこないかも?
学年は江川より1つ下。スポーツ一家に育ち、プロ野球選手の兄を持つサラブレッドだが、高校時代に悲願の甲子園出場をはたせずドラフト外で巨人に入団。プロ選手としては江川より先輩だが、常に華やかなスポットライトをあびる江川をどんな想いでながめていたのかは想像にかたくない。
練習熱心で、江川へのライバル心をむきだしにする“雑草魂”・西本。感情を表に出さず、ひょうひょうとエリート街道を歩む江川。
何もかも対極的なライバル同士だが、本作には一般的に知られる2人のイメージにとどまらない素顔を垣間見せてくれる期待大。当事者への取材もしっかり行っているようだが、“新証言”に加えて数々の野球マンガを手がけてきた原作者・森高ならではの独自の解釈も楽しみだ。
しかし、この2人が高校時代に一度だけ練習試合で顔をあわせていていたとは知らなかった。
ブルペンで並んで投げる2人の姿、生涯のライバルとなるとはお互い想像だにしない頃かわした会話に心がゆさぶられる!
<文・粟生こずえ>
雑食系編集者&ライター。高円寺「円盤」にて読書推進トークイベント「四度の飯と本が好き」不定期開催中。
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