『父ちゃんはいつも仕事場』第1巻
ぢたま(某) ワニブックス
(2015年4月25日発売)
著者のぢたま(某)といえば、『ファイト一発!充電ちゃん』、『kiss×sis』など、繊細な絵柄でちょっとマニアックなシチュエーションを描く点が魅力の、実力派「萌え」漫画家として知られている。
本作はそんな彼が、奥様と2人の娘に囲まれた家庭生活を赤裸々に描いた、(いちおう)フィクション仕立てのエッセイコミックだ。
とにかく、肩の力の抜けた描きっぷりが良い。
家庭の不和だの、子供の反抗期だの、金銭トラブルだのやれなんだのといった、この手のコミックにつきものの問題らしい問題も起こらず、淡々と明るい毎日の描写が続く。
国民的大作家でこそないかもしれないが、20年近く手堅く作品を世に送り出し続け、世間にたしかな存在感を示してきた漫画家の日常とはこんな感じなのか~……と、しみじみと納得させられる。
漫画家の生活を描いた実録コミックは多々あれど、これくらいの温度感の作品は、なかなか珍しいと思う。
単行本では、マンガの枠外に奥様による内容への補足やツッコミのコメントが描かれており、こちらも味わい深い(奥様も漫研出身ということもあって、絵も達者)。
読むと、子持ちの親しい友人の家に遊びに行ったような気持ちになる。そんなほっこりとした気分を味わいたい人にオススメだ。
<文・後川永>
ライター。主な寄稿先に「月刊Newtype」(KADOKAWA)、「Febri」(一迅社)など。
Twitter:@atokawa_ei