『グッドナイト』第2巻
南Q太 祥伝社 \900+税
(2015年5月8日発売)
やさしい男と結婚をしたら、義母と義姉がとんでもない人だった!!
最愛の娘を産んだ直後に、義母と義姉に強引に奪われた晴子。
その後も何かと干渉し、口汚くののしってくる彼女らに、夫も晴子も翻弄されるまま歳月は流れ、夫とも距離ができ、ようやくできた息子も中学生となり、晴子はひとり、仕事と家事と義父の介護に追われ、静かに精神を病んでゆく。そんななか、2人の子どもたちが真実を知って――。
って、昼ドラかよ!とツッコミたくなる、ドロドロ一族の愛憎劇。なのだが、そこは痛々しい女子のいびつな愛を描き、多くの共感を集めてきた南Q太。
ともすれば陳腐になりかねない設定を、スタイリッシュな絵とクールな語り口と鋭敏な心理描写でリアルな凄みあふれる人間ドラマとして紡ぎ出している。
2巻では時間をさかのぼり、登場人物それぞれの過去が描かれてゆく。
なかでも、義姉とその夫の若き日のエピソードは意外であり、現在へと至る義姉の「憎悪の根源」を知ってしまうと、「真の悪人」なんてじつはいないのかも――と、なんとも切ない気持ちになってしまう。
誰もが苦しみ、救いを求めているにもかかわらず、決して重なることがなく、バラバラに分断された現在から、今後どのような未来が導き出されるのか?
絶望の果ての「家族の再生」を祈りつつ……まだまだ、目が離せない!
<文・井口啓子>
ライター。月刊「ミーツリージョナル」(京阪神エルマガジン社)にて「おんな漫遊記」連載中。「音楽マンガガイドブック」(DU BOOKS)寄稿、リトルマガジン「上村一夫 愛の世界」編集発行。
Twitter:@superpop69